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プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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161.  JUNO/ジュノ 《ネタバレ》 
う~ん……なんだかとても、釈然としない。確かに堕ろすよりは、良い里親を見つけて養子縁組をする方が賢明な選択であるようにも思える。しかし無計画な妊娠それ自体が大きな失敗で、養子縁組もまた苦渋の結果だった、という現実には変わりない。なのにあのあっけらかんとしたハッピーエンド。もうちょっと罪悪感を持ってほしいと思う自分は、頭が古いのだろうか。  それに妊娠の責任を一切負わなかったへたれのボーイフレンド、あれにジュノが惚れ直してしまう展開がどうしても理解できない。彼はジュノの妊娠に際して積極的な行動を一切取っておらず、まだ若いことを差し引いてもダメ男そのもの。だがジュノは「最高にクール」だという。おいおい、自分の無責任を棚にあげて「傷つけられたのは僕の方だ。君は子どもじみてる」と抜かす奴のどこがクールなんだ?  この作品のコンセプトとしては、表面的には軽く、でも不謹慎なようでいて実は考えるべきところはちゃんと考えている、って辺りを目指したんだろう。でもどういった形であれ、一人の子どもの人生を、自分達の手で育てることなく決定付けてしまったなら、それは決して褒められた行動じゃない。「妊娠したら堕ろせばいい」という考えよりは「妊娠したら他人にあげればいい」という考えの方がましかもしれないが、けれども安易なのには違いないし、無責任さでは五十歩百歩だろう。  明るくポジティヴなのも、限度を超えればただのバカ。なんでもかんでもポップでクールにすればいいってもんじゃないよ。
[DVD(字幕)] 6点(2008-12-05 09:42:34)(良:1票)
162.  ボルベール/帰郷 《ネタバレ》 
恥を忍んで言うが、わけがわからない。正直、宇宙人のドラマを見せられているようだった。  つまらないとは思わないし、むしろ面白い。しかしたとえば映画の撮影スタッフが訪ねて来たその場でレストランを開こうと決めるところとか、全然思考回路が理解できない。旦那が死んでその死体が冷凍庫にまだ入っているのに、その場で商売を? 「え? え?」と言っているうちに物語がどんどん進んでいく。気持ちの切り替えが早いとか、ポジティヴというレベルではない。前に進むことしか知らない生命力の弾丸のような行動に、終始開いた口がふさがらなかった(悪い意味でなく)。  同監督の映画を他にも観たけれど、するりと消化できるようなものが一本もなく、必ず「はあ??」となってしまう。これは自分が男だからなのか、あるいは根っからのネガティヴ人間だからなのか……なのに、面白いといえば面白いのだから、戸惑ってしまう。なんなんだろう、このアルモドバルという人は?
[DVD(字幕)] 8点(2008-08-18 22:22:39)(良:1票)
163.  仁義なき戦い 広島死闘篇
山中のぎらぎらと光る眼が忘れられない。凄まじい暴力性、心の内に炎のような激しさを持ち、最後には謀略にのせられ、内なる炎で自らをも焼き尽くす。彼がヤクザの中で伝説的な存在になったのも納得できる。 ただ、妻と子供に対しては優しかったことも印象深い。組長を信じて一途に尽くす純粋な一面も持ち合わせていた。もちろん彼のしたことは許されないし危険な人物だったことは確かだが、彼が伝説的な殺人鬼である前に、一人の人間だったこともわかるのだ。たとえ犯罪者でも、その過酷な運命には胸を打たれずにいられなかった。  そして狂犬のような大野勝利もやっぱり忘れ難い。暴力を振るうことにまったく躊躇せず、人間の死体を銃の的にし、父親に絶縁を申し渡されてバックを失っても「かまわん、わしがほしいのは広島じゃ」とせせら笑う。勝利には山中のような人間らしさの欠片もない。  この二人の若い男の刹那的で危険な生き様には、一見の価値があります。
9点(2005-03-01 00:13:57)(良:1票)
164.  HOTEL ホテル(2001)
いろいろ実験して頑張っているのはわかったけど、退屈だった。遊びが過ぎるあまり、肝心のストーリーがぼやけてしまっている。その割りに映像が綺麗なわけでもないし、音響は安っぽい。画面を四分割する手法は面白いと思ったけど、やっぱり混乱する。もっと脚本中心の素直な映画にしてほしいと思った。
[DVD(字幕)] 3点(2005-09-14 02:42:55)(良:1票)
165.  隠された記憶 《ネタバレ》 
ラストシーンは正直、気がつきませんでした。観直そうとも思わない。多少ハードルが高くてもその難解さに意味があるのならちょっとは努力しようと思えるけれど、これは別に……。理解できてもさしたる感動はなさそうで、どうでもいいというのが率直な感想です。  監督はインタビューで「真相は重要ではない」と語ってましたが、人間の関心っていうのはどうしても隠された部分に向かうもので、本当に重要じゃないならこういう描き方はどうかと思います。人が罪とどう向き合うか、という大切な主題は、むしろブレてしまったのでは。  ただこの作品のすごいところは、物語としてはほとんど緩急がないのにも関わらず、張り詰めた緊張感がまったくといっていいほど緩まないこと。長回しを多用しつつもだれがない。つまらない映像でも音楽があれば誤魔化しが効くそうだけれども、あえて完全に排されている。  カメラワークを勉強した訳ではないので詳しい理屈はわからないけれども、映像の文法を知り尽くした人によって、完璧に制御された映画であることは明らか。物語としては平坦でも、視点の運動によってリズムが生み出されている。だから無理に集中しなくても自然と引き込まれるし、話の割には飽きが来ない。これって何気にすごい。  ショッキングな自殺の場面も、観る側の呼吸の間隙を突いた、いやらしいまでに絶妙のタイミングで差し込まれる。間の計り方、微妙な匙加減が憎いほどに上手い。かといっていかにも不自然に芸術ぶった構図があるわけでもなし、本当に、卓越した技巧だと思います。手放しに絶賛はできないものの、非常に見応えのある作品であったことは確かです。
[DVD(字幕)] 7点(2009-05-08 20:32:45)(良:1票)
166.  スイミング・プール 《ネタバレ》 
ランプリングの存在感。神経質で底意地の悪い感じ、単なる狂人ではなく、どこかが壊れた普通の人、といった人物造形が絶妙だ。こういうオチはありがちだが、それを多重人格のようなセンセーショナルなネタを使わずに作家の創造性で説明しているのがいい。日の光にゆらめくプールの水面、裸で泳ぐ若い女、唐突に行われる殺人……これはいわばプールにぷかぷか浮んでまどろんでいるうちに見た白昼夢のようなものだったのだろう。心地よく、美しく、幸福感に満ちた、しかし背筋が冷たくなるような狂気もかいま見える夢。楽しいけれど、油断すると何かに足首を掴まれて水中に引き込まれそうな、得体の知れない不安がある。プールからあがった後、楽しく泳いでいたはずのプールが、実はある女の心の中だった、というぞっとする真実に気付かされる。
[映画館(字幕)] 8点(2005-01-16 02:54:14)(良:1票)
167.  the EYE 【アイ】 《ネタバレ》 
『降霊』(黒沢清監督)と『リング』、そしてちょっとだけ『デッドコースター』と、いろいろな映画のテイストを混ぜ合わせたような印象。しかし、それでもなおよい作品。映像と演出の素晴らしさもあるが、常人とは異なる能力を持ってしまった人間の悲哀、という古典的なホラーのテーマが中心にあることが大きい。リンの悲哀を描くシーンの痛々しさは『リング』に似ているようで、明らかにそれを凌駕している。一見いろんな材料を使っているが、実は最終的にそのテーマに集約される。目が見えないことは障害だが、かといって普通の人よりも見えすぎてしまうことはさらに大きな障害になる。ラストで再び失明した彼女が、皮肉にも重荷を捨てたかのように笑っている姿が印象的だった。クローネンバーグの『デッドゾーン』に次ぐ良作では?
8点(2004-12-18 07:29:51)(良:1票)
168.  セルラー
人物設定が絶妙。敵役はロス市警のブルース・ウィルスっぽい強そうな刑事で、味方は軽い感じのお兄ちゃんと、W・メイシー演ずる勤続26年間人を撃ったことのないムーニー巡査(しかもスパへの転職を考えている)。このムーニーさん、わざわざ倒れた金魚鉢の中の魚を助けるんですよ。こんな可愛い警官初めて見た(笑)。味方が一見頼りないので、最後までずうっとハラハラしてた。  全体的に小味だけど、それが地味じゃなくて切れ味の良さにつながっている。90分足らずにまとめたのが高感度高し。舞台の明るさも手伝ってか、カラッとしてて後味もすごくいい。良質の娯楽作です。
[DVD(字幕)] 7点(2006-01-02 07:10:18)(良:1票)
169.  駅馬車(1939)
登場人物全員のキャラクターがたっているのは確かだけど、どうにもドラマのバランスが悪い。医者の活躍と博打うちの死は胸にじんと来るものがあったのに、肝心のジョン・ウェインがよくわからない。「家族を殺された」とありがちな説明をさらっとされただけで、復讐にいたる心の動きは省略。結局リンゴがどんなやつで何を考えて生きているのかよくわからなかった。娼婦のダラスとの恋も、あまりにも急な展開で強引すぎる(そんな衝動的にプロポーズしたら、絶対離婚するって!)。脇役の存在感はいいのに、肝心の主役二人の掘り下げがおざなりに過ぎる。  インディアンの襲撃シーンは、弱すぎる敵がぱたぱたと死んでいく様子がシューティングゲームのよう。馬から馬へ飛び移るところ以外はたいしたことない。せめてご婦人方は窓から顔を出さずに床に伏せるべきでは? インディアンはなぜ馬を狙わないのかな?  歴史的な価値は知らないが、娯楽としても人間ドラマとしてもたいしたレベルとは思えなかった。 ただ、西部荒野の雄大な光景には感動したが。
[DVD(字幕)] 6点(2005-10-02 01:59:36)(良:1票)
170.  イヴの総て 《ネタバレ》 
リアリティを感じたのが、イヴはさまざまな策謀をめぐらして栄光を手にするものの、敗者にしか見えないという点だ。誘惑した男にはプライドを傷つけられ、脅迫にしても無意味で、友人を失っただけ損だった。大女優の付き人になるまではともかく、時間がかかっても正攻法の努力をした方が、遥かに理に適っていただろう。  こういう人、実際にいる(性別に関わらず)。自分以外はみんなばかだと思っているのか、本人は狡猾に他人を利用しているつもりで、実際はバレバレ。歪んだ自己愛に基づいて行動してるから判断力が鈍って、浅はかな目論見は見透かされることがわかっていない。  女の子が鏡に見惚れる万華鏡のようなラストシーンは鮮烈に美しい。けれども映っているのはどこまでも自分だけ。きらびやかな夢が虚しいナルシシズムの発露でしかないことを告発するようだ。  階段に座ったイヴが夢見るように語った「観客からの喝采だけあればいい」という言葉は、本心に聞こえた。演劇への純粋さを表明する演技と取っても別に矛盾はないが、きっとあれは、本心と仮面とが一致した珍しい瞬間だったのではないだろうか。授賞式のでイヴは裏切った友人達に臆面もなく謝辞を送るが、あれも実は何分の一かは本気のなのではないか。マーゴの「自分の心を正しい場所に置きなさい」という言葉はただの皮肉とは思えない。マーゴはあれだけ忌み嫌いつつも、イヴの本質を理解できてしまったのだろう。  〈イヴ〉は最初の女の名前、タイトルはつまり女のすべてという意味だろうと思われる。秀逸な筋書きではあるけれどしかし、所詮は男が書いた脚本だと感じるところはある。最後は男性がおいしいところをかっさらい、善人悪人に関わらず女性に支配的な位置に立つ。行き着く真理は「女の幸せは結婚」、か。なんだかなー。  端役で出演しているマリリン・モンローの実人生を、なんとなく作品に重ねてしまった。貧しい境遇から這い上がって名声をつかむも、待ち受けていたのは痛々しい最期。世界中の男性に愛されたようでいて、食いものにされたようにも取れる。  また、脚本は堅固に構築されているが、余裕もなければ隙もない。映画でも小説でも、あまりに言葉を尽くして説明してしまうのは野暮だ。加えて直接作品の出来とは関係ないが、字幕は細かいニュアンスを殺していたと思う。多少は仕方ないとしても台詞のテンポまで全然違うのは勘弁してほしい。
[DVD(字幕)] 6点(2009-06-25 00:00:12)(良:1票)
171.  夢のチョコレート工場 《ネタバレ》 
3点か4点かで迷ったんですが、ずいぶんと平均点が高いですね。心に響かなかったので驚いてます。   まず、全編ちゃちな美術で白けた。一見デパートの子供広場。チョコレートの川を渡る船や炭酸で進む自動車などの乗り物も想像力に乏しく、時代を感じてしまう。どうせファンタジーならもっと荒唐無稽なイメージに浸りたかった。   最大の欠点は、観ていて「チョコレートを食べたい」という気持が湧いてこないこと。冒頭のお菓子の加工場面にはわくわくしたのに、後半になるとむしろ食べたくなくなる(不味そう&製造過程が汚い)。せっかくチョコレート工場を舞台にしてるのに、お菓子の美味しさ、素敵さといったものが伝わってこない。この辺はディズニーの短編と比べると表現力に雲泥の差がある。    また【皮マン】さんご指摘の通り、ミュージカルのつまらなさは目も当てられない(『ウンバ・ルンパ』は例外)。盛り上がらないことこの上ない。子供向けの作品はとりあえずミュージカルやっときゃいいとでも思ったのだろうか?   結末も納得行かない。お金持ちになるだけならまだしも、この少年からはチョコレートに対する愛情があまり伝わって来ないので、工場を継ぐ資格があるとは思えない。しかも普段は良い子だけれど工場ではいたずらもしていて、それなのに他の子供よりも罰が甘い。そもそも拾ったお金をネコババしている。テレビの観すぎは戒められて、拾得物横領はOKって…な~んか変。   大体さ、この映画で言う「いい子」って、命令を聞くだけの扱いやすい優等生、独善的な大人の押し付ける理想像に過ぎないんだよね。ワンカが子供を後継者に選んだ理由も、「大人は言うことを聞かないから」。だけど生意気で元気な子供だって可愛いし、大人を困らせるようなやんちゃな子供ほど大きな可能性を秘めているもの。  躾、教育が大切なのは当たり前。しかし行き過ぎれば子供から自主性を奪い、大人の押し付ける型にはめ込んでしまう危険があるのも確か。「ウンバルンパのようになりましょう」という歌が繰り返し登場するけど、そのウンバルンパとはみんな同じ顔をした奴隷でしかない。  この映画は教育というもののグロテスクな側面を体現している。自分の子供にはみせたくないという意味で、ファミリー映画としては致命的です。
[DVD(字幕)] 3点(2006-02-06 01:14:34)(良:1票)
172.  クラッシュ(2004) 《ネタバレ》 
ほとんどの登場人物が善人とも悪人ともいえない人物に設定されているのがいいと思う。悪党に見えた人間が他人を救い、逆に善人に見えた人間が罪を犯してしまう。真に邪悪な人間はいないのに、いつのまにかいがみ合い、憎み合っている。完璧な者は一人もおらず、それぞれが欠点を負っている。積極的な人種差別というよりは、誰もが抱えている不幸の数々がやり場を失って、差別という形で発露している。小さな悪意が交叉し、誤解と偏見が連鎖し、やりきれない出来事を積み重ねていく。どんな人種でも、そういう意味ではみんな平等に人間らしく、不幸だ。   ところがこの映画では、そんな暗い世界をささやかな奇跡の数々が切り開く。なぜなら人間は欠点を持つのと同じように長所も持ち合わせていて、ちょっとした偶然から善意が交叉するときだってあるし、ときには理解し合うことだってできるからだ。救いがたい悲劇に転ぶことがある一方で、良い方向に転ぶことだってある。そういう意味でもみんな平等に人間らしく、幸福になれるチャンスを持っている。  この映画が提示する希望はとても控えめではあるが、それだけに力強い存在感を持っているように思える。
[DVD(字幕)] 8点(2006-08-09 15:56:18)(良:1票)
173.  パリ、テキサス
ラストのトラヴィスの行動を見て、「バカなやつ…」と思ってしまう。でも心からの軽蔑をこめてそう思ったわけではなく、軽蔑と賞賛、同情と共感の入り混じった複雑な感情を込めての「バカ」なのです。  トラヴィスの行動はけっして褒められたものじゃない。弟夫婦の気持ちを無視しているし、息子を母親が一緒に生活しても幸福が保証されるとは限らない。しかし自分が一緒にいればまた二人を不幸にしてしまうかもしれないと知っているからこそ、あえてひとりで夜明けのハイウェイを行く彼の横顔を見ると思わず…。トラヴィスをかっこいいとは思わないけど、嫌いになることもできなかった。あの男はあの男なりに家族を愛していて、懸命に二人を幸福にしようと頑張ったのだから。人間の弱さや愛情というものの難しさについて、考え込まずにはいられない。  映像、音楽の美しさには驚いた。とりわけ映像については、個人的にはいままで観た映画のなかでももっとも美しいとさえ思った。全編にわたって圧倒的なクオリティ。「映像詩」という言葉はまさにこのような作品のためにあるんじゃないだろうか。
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-07-05 14:01:26)(良:1票)
174.  D-WARS ディー・ウォーズ 《ネタバレ》 
中世ヨーロッパの甲冑を纏った騎士団が現代兵器と戦うおバカ映像をテレビ番組で観た記憶があり、思わず借りてしまった。……不覚だった。  あらすじをそのまま映像化したのではないかと疑わしいほどの足早な展開は、とてもじゃないがプロの仕事とは思えない。それなりの見せ場になりそうな部分でも必ずなにかしら仕出かしては着実に台無しにしていく。日本のヒーロー戦隊ものの匂いがそこかしこにするのだけれど、それらより一回りも二回りも薄っぺらいドラマを創り上げているのは驚異としか言いようがない。確かに特殊効果は努力が感じられるのだが、それ以外があまりに不毛だ。  若手芸人並みのオーラしかない出演者達には、鑑賞しながら同情の念が湧いてきた。どうしてこんなことに? いったいどこでこの人たちの人生は狂い始めたんだろう? クライマックスでのヒロインの台詞(「わたしが死んでも愛は永遠よ」)に、別の意味で涙腺が決壊しかけた。  監督は元コメディアンだというから、もしかするとこれは手の込んだジョークなのかもしれない。しかしそう思ってネット上でインタビューを見つけ出してみたら、怪獣映画への情熱をそれはまあ嬉しそうに語っていて、なんというかもう、頭を抱えた。C級ホラー『案山子男』のメイキング(本編よりホラー)を観てしまったときにも似たような感覚になった。監督は製作のトップに携わろうなんて欲は抑えて、特殊効果の専門家として腕を磨いてはどうだろうか。
[DVD(字幕)] 2点(2009-07-06 18:31:03)(笑:1票)
175.  グッドフェローズ
強力な伝染病の話を思い出した。致死率が五割を超えるエボラ出血熱の一種は、宿主たる人間が減りすぎて、病が広まる前に死に絶えてしまったのだ。並外れた攻撃性は諸刃の刃となる。  ちょっとした気に食わないといっては人を殺し、分け前が惜しいからといってはまた殺す。ここまでくると凄みがあるとかいう以前に、バカである。いくら非合法組織といえど、信頼関係もなく裏切りを当然のものとすればいずれ組織が立ち行かなくなるのは目に見えている。「道から外れたものはすぐに殺し、恐怖で統制を取る」という台詞があったが、逆効果だ。恐怖がもたらしたのは疑心暗鬼と混乱、そして破滅。頭の悪いチンピラの物語は『ゴッドファーザー』のようにかっこよくはないものの、徹底したリアリズムには惹きつけられる。  ただ実話だから仕方ないが、終盤が退屈。麻薬が絡み始めてから失速し、尻すぼみに終わってしまう。つかみは素晴らしいし、趣味のいい音楽にのせて流れるストーリーはなかなか楽しめたのに、終わり悪ければ全て悪し。結末で一気に評価が下がった。
[DVD(字幕)] 7点(2005-11-20 23:11:01)(良:1票)
176.  オアシス 《ネタバレ》 
クライマックスが近づくにつれて暗澹たる思いになり、観たことを後悔した。枝を切る場面では不覚にも泣きそうになる。喚きながらひたすら鋸を引くジョンドゥと、ラジオの音量をあげることで答を返すコンジュ。こんなにもロマンティックな雰囲気から程遠く、しかし力強く切実な愛の表現はみたことがない。  けれどもほんとうに衝撃的だったのはラストの手紙だ。刑務所を出たら、おいしいものをごちそういたしまする、などとのんきにのたまうジョンドゥ。明るい日差しの中で一心に掃除を続けるコンジュと、とぼけた音楽。冤罪の悲劇なんて、どこ吹く風といった雰囲気。気が抜けて、思わず笑ってしまった。ああ、この二人は「無敵」なんだな、と思った。誰であれどんな出来事であれ、二人を引き裂くことはできないんなだと。  思えばジョンドゥは最初からそうで、常識に捕われずに自分のやり方を押し通していた(それゆえの危うさもあるけれど)。コンジュを連れて周囲から冷ややかな視線を浴びても平気。ジョンドゥを強姦容疑で取り調べた警官は「彼女を見ろ、欲情なんてできるか? お前は人間じゃない」などと言い放ったが、ほんとうに残酷なのはそっちのほうだ。ジョンドゥには一切の常識もなければ、偏見もない。彼にとって確かな事実は、「コンジュは可愛い」、それだけ。障害に対する差別どころか同情すらもなく、完璧にまっさらな目でひとりの女性として見つめている。「差別」どころか「区別」しているどうかも怪しい。  この結末は暗いと捉えるのが普通だろうけど、二人は(とくにジョンドゥは)、たぶん全然そう思っていない。きっと周囲の思いとはまったくかけ離れたところで、彼らは彼らなりの幸福をつかむ。どんな場所であれ、二人がそこにあると思った場所に“オアシス”は存在するのだろう。
[ビデオ(字幕)] 7点(2007-06-26 00:36:13)(良:1票)
177.  降霊<TVM>(1999)
『降霊』という題を文字通りに受け取ってはいけない。この映画の怖さは、霊の怖さではなく、人間の怖さだ。はじめは単なる幽霊物のようだが、だんだん犯罪サスペンスの趣になり、やがて霊媒師の女性の心のゆがみが明らかになる。そして、役所広司の前に本当の幽霊ではない、彼自身の罪の意識が「降霊」する。これは、怖い。
8点(2004-02-28 05:37:24)(良:1票)
178.  汚れた血
洒落てはいるが婉曲に過ぎる台詞は理解も共感も及ばないところにあって、最後まで一ミリも心を動かされることはなかった。主人公アレックスの恋する気持ちもまったく伝わってこない。これが現実なら、単に思い込みの強いやつなんじゃないかと疑うくらいだ。でも「愛のないセックスで感染する死病」という魅惑的な設定を用意しておきながら直接物語に関わってくることがなかったのを見る限り、アレックスは純粋そのものだったのだろう。ラストシーンでヒロインが頬についた血を拭わないのは、それが決して汚れた血であるはずがないとわかっていたから。にしても、映像がかっこよすぎる。ゴダールの再来といわれたそうだけど、そんな呼称はカラックスに失礼だろう。おかげで物語はどうでもいいのにこれっぽっちも退屈しなかった。アートという言葉を退屈の言い訳に使う作品は嫌いだ。本来これくらいの吸引力を持っていてこそのアートだろうと思う。
[ビデオ(字幕)] 8点(2006-01-17 13:20:02)(良:1票)
179.  ルナティック・ラブ/禁断の姉弟
荒涼とした光景が忘れられない作品。大切な時間を噛みしめるようにお互いを抱く二人が幸せそうなだけに、安穏な生活の終わりを暗示する結末が切ない。ジュリーの「…わたしたちは正しいよね?」の言葉には胸を打たれた。真実はセメントで塗り固められ覆い隠されたかのように思えたのに、やがてひび割れ、あっけなく崩壊する。堅牢に見えた庭は実はとてももろくて、それがどんなに楽しかったとしてもけっして長続きしない。喪失の痛みをごまかすために築かれた生活が、結局はその痛みをより大きなものにしてしまうやるせなさ。 シャルロット・ゲンズブールの瑞々しい魅力も印象に残る。そりゃ弟も惚れるって。
[ビデオ(字幕)] 7点(2005-06-25 18:41:19)(良:1票)
180.  ドニー・ダーコ 《ネタバレ》 
この作品についてはどうしてもレビューがまとめられず、書いては消しを何度か繰り返していた。爽やかなスポーツものとは真逆の、感受性と過剰な自意識にがんじ搦めにされた暗く鬱屈した青春。 (詳細はブログにて)
[DVD(字幕)] 10点(2007-11-25 22:53:40)(良:1票)

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