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no oneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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1.  ぐるりのこと。 《ネタバレ》 
入念に作りこまれた映画だと思う。構成は徹底的に考え抜かれていて、情報量も多い。夫婦の生活と有名事件の裁判を交互に語る形式で、微視的・巨視的に90年代を切り取ってみせたのはちょっとあざとくも思えるけれども、確かに成功している。年代もきちんと提示されるが、女性のファッションを見るだけで時代がわかる描写の細やかさはさすが。風呂場で椅子から落ちてごつんと音がするところとか、リアリティうんぬんというかもう、生々しくて肌に伝わってくるようだ。  女は子どもを失った罪悪感から会社を辞め、男はなにごとにも辛抱強く、自分を納得させるための涙は絶対に流さない。英題を見ると「ぐるり」は二人を取り巻く周囲の状況を指しているようだが、逃げそうで逃げない、遠回りしているようで実は真摯に現実と向き合っている二人の生き方もまた「ぐるり」なのではないか、と感じる。というか安易な答えに飛びつかずに(あのうさんくさいベストセラー作家に抱きつく変人みたいに)、生きることに真摯でいようとするとするなら、回り道せざるをえないのかもしれない。  ただ、これほど見応えのある作品も珍しいが、正直いって内容を消化し切れなかった部分もある。割と爽やかに終われそうだったのに「継母ぁ!」を入れてきたのにはびっくりした。それに巧妙な構成が仇となって、ときどきものすごく冷静になったり、展開そっちのけで考え込んだりしてしまい、肝心な夫婦のドラマを遠巻きに眺めていた感がある。なのですごい作品とは思うけれど、感動の度合いを正直に書くと7.5点くらい。繰り返し観れば、いろんなことが腑に落ちるのだろうか。
[DVD(邦画)] 7点(2009-08-09 22:48:07)
2.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 《ネタバレ》 
年代的にも共感できる要素が少なく、テレビ番組で前もって見所を知っていたのもあって、かなり冷静に鑑賞。なのに、不覚にも泣いてしまった。なんというか、ギャグとシリアスの緩急が上手いのですね。クレしんだけにくだらない部分は思いっきりくだらなくできるわけで、その点は卑怯というか、巧妙だなーと思いました。  衝撃的だったのは、計画が潰えた後に悪役の二人が自殺を図るエピソード。推理ものならともかく、低年齢向けでこんなのは珍しい。おまけにこの悪役がどうしてこんな事件を目論むに至ったのか、バックグラウンドがまったく描かれていない。尺の関係もあったのかもしれないが、大胆に余白を残したのは正解(ジャンプ系のやたらと回想を織り交ぜて語りまくる漫画には見習ってほしい)。  声優の貢献もあり、ケンとチャコは名キャラクターとなっている。敵役に存在感を持たせたことが作品を成功させた要因の一つでしょう。
[DVD(邦画)] 7点(2009-07-06 23:16:15)(良:1票)
3.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 
歯をむき出しにして犬のように「うー」と唸るクリント・イーストウッドが、可愛い。……この人を愛らしいと感じる日が来ようとは思わなかった。ユーモラスで、いつになく明るいトーン。最近のイーストウッド作品から重厚なドラマを予想していたら、きれいに裏切られた。いい意味で単純な、芸術ぶったところのないヒューマンドラマで、普通に友達に勧められるような作品だった。  中核にあるのは西部劇のガンマンのようなヒロイズムではあるけれど、理想通りには行かない酷薄な現実と向き合ってもいる。スタローンの『ロッキー・ザ・ファイナル』同様に、原点回帰の若々しい意志と、現実的にならざるを得ない成熟の両方があった。頑固な老兵は時代遅れであることをわかっていてなお、自分なりの流儀で戦うのだ。銃の代わりに、強い意志としかめっ面と、ちょっとばかりの茶目っ気を武器にして。  普段ならもっと癖のある作風の方が好みなのだが、これを否定するのは難しい。ストレートど真ん中の球だからこそ、そこにイーストウッドの信念、人間性が込められている。別にイーストウッドファンではなかったけれど、今でははっきりと好きだといえる。この映画も、彼その人も。
[映画館(字幕)] 8点(2009-05-09 18:04:06)(良:1票)
4.  クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ金矛の勇者
ちょうど『戦国大合戦』を観た直後だったのでテレビで放送されていたのをなんとなく鑑賞。……これはちょっと、褒めるところが見当たらないかな。これを子どもだましといったら子どもに失礼でしょう。  いろいろなものを詰めこんだせいでわけわかんなくなってるし、しかも取り入れているのがまた浅はかな流行ネタばっかり。話の筋がくだらないのに加えて台詞のひとつひとつが薄っぺらくて、ギャグは痛々しいほどすべってる。脚本が完全にやっつけ仕事。  というか、一人称に『僕』を使う女の子を出して、しんちゃんがその胸を触ってドキッとするとか――クレヨンしんちゃんでやることじゃない。はっきり言って気色悪かったです。
[地上波(邦画)] 3点(2009-04-22 23:08:35)
5.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 《ネタバレ》 
こんな作品を子どもの頃に観たかったと思う。そして大人になってから、もう一度観返したかった。それがいちばん幸せな観客でしょう。  姫が池のほとりに佇んでいるだけの、一切の台詞がないプロローグだけでちょっと感動。又兵衛と姫の関係そのものがそうだけれど、大事なことを言葉にしていない。というより言葉にしたら失われるような微妙な心の動きを、徹底して人の動作や、その目に映っているであろう風景を通して表現している。とてもやわらかで、細やかな視線だ。  侍と姫の恋物語はとても素朴で、単純とすらいえる。けれどもその繊細な描写が二人の息遣いまでも伝えるようで、素直な物語のなかにも汲みつくせない美しさがある。「言わぬが花」という言葉が、ほんとうの意味で生かされた作品だ。  また本編の主役であるしんのすけが脇役でしかないという批判もあるようだけれど、ちょっと違うと思う。  たとえばいざ合戦となって野原家が脱出しようというとき、悲壮な表情の両親とは対照的に、しんちゃんはあっけらかんとしている。つまり幼さゆえに絶望的な戦であることが理解できていないわけで、だから戦場の真っ只中に巻き込まれても両親ほど怖がったりはしない。それがラストで又兵衛が倒れて初めて、大声で泣き喚く。あのときようやく、〝死〟というものがしんのすけのなかでリアルになった。  つまりこの物語は侍と姫の悲恋譚である一方で、幼い少年が初めて〝死〟を知るまでの成長物語でもある。  この映画には子どもからはわかりにくい部分も確かにあるだろう。けれど、子どもにとっては世界はわからないことだらけであるのが当たり前のはず。そんななかでしんのすけは、大人の恋や死といったままならない出来事を垣間見て、少しだけ大人になる。人生は楽しいことばかりじゃなく、どうしようもなく失われていくものがあって、だからこそ輝きがあるということを知る。ほんとうの成長はいつも、苦い。  この映画が子ども向きではないという意見もあるようだけれど、ほんとうにそうでしょうか? これはとても真っ当に、本気で子どもに届けられた作品だと思います。
[DVD(邦画)] 9点(2009-04-16 19:27:27)(良:3票)
6.  クローバーフィールド/HAKAISHA 《ネタバレ》 
ディズニーランドのアトラクションの、映像に同調して座席がぐいんぐいん揺れるやつを思い出した。乗り物酔いは一切しない体質なので個人的には平気だったが、辛い人は辛いだろうなと思う。実際そういう上映方法をしても違和感はないレベルだった(健康には障るだろうけど)。  自由の女神の首が飛んで来る画は、それだけでニューヨークの死を明示する名場面。しかし以降それを上回る劇的な映像はなく、ちょっと退屈した。地下鉄に入ってからのありきたりな展開がとても残念。  有名俳優を起用しないことで登場人物の普通っぽい雰囲気が増し、また誰が生き残るか予想がつきにくくなっている。怪物の全貌を見せずに恐怖感を煽るところもそうだが、『エイリアン』第一作を思わせるテクニックを怪獣に用いたところが斬新。  でもこの映画に一番影響を与えているのは過去の作品ではなく9・11の記録映像だろうと思う。粉塵が押し寄せる光景は現実そのまま。家族から電話がかかってくる下りは、描写が素朴なだけに痛々しかった。幕の閉じ方も非常に秀逸。パーティーのときに暗示するような応答はあったが、なるほどあの伏線をこう回収するのか、と感動させられた。カメラマンをあえてああいう性格にすることで視点を明快にしたのも上手い。  ただ、実験精神は買うけれども、全体として普通に面白かったかというとそうでもない。せめてもう一箇所、女神像レベルの見せ場があれば作品が引き締まったのではないかと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2008-09-20 07:13:12)(良:1票)
7.  グッバイ、レーニン! 《ネタバレ》 
政治を題材にしつつ、同時にコメディタッチの温かい家族ドラマでもあるという稀有な作品。社会主義というと怖いイメージしかなかったけれども、思想の根底には平和と幸福を追求する純粋さがあるのかなあと思わされた(だからこそ恐ろしくもあるんだろうけれども)。  息子のお手製の偽ニュース映像を観て母親が泣くクライマックスはほんとうに素晴らしい。政治的きな臭さや現実の過酷さを、息子の強引極まりない嘘が振り切ってしまう。当然のごとく嘘は破綻するのだけれども、嘘というフィルターを透してかえってその愛情の真っ当さが顕わになるという脚本の上手さには、唸った。母親の「素晴らしいわ」という言葉は息子の嘘に調子を合わせてはいるんだけど、嘘じゃないんだよね。あの瞬間、突き通した嘘が真実になった。  「グッバイ、レーニン」というタイトルも秀逸。母親の純粋さは裏を返せば致命的なもろさでもあったはずで、本来ならかつての心の支柱であった社会主義に訣別するのは不可能だったろう。しかし映画を最後まで観ると、彼女は確かにこう言えたはずだと思えるのだ。
[DVD(字幕)] 9点(2008-08-06 17:28:40)
8.  グエムル/漢江の怪物 《ネタバレ》 
アメリカ人には逆立ちしても作れないモンスターパニック。アクションでもホラーでも、題材を替えて同じパターンを繰り返すだけになりがちなもの。安手の使い古されたネタで、よくぞここまで斬新な物語を展開したものだと思う。  まず軍や警察ではなく、どちらかという生活レベルの低い庶民、しかも一家族を主役に据えているのが新しい。こういうのはたいてい偶然居合わせた連中がやむを得ず戦ったりするわけだけど、家族を中心に展開されるだけで否応なしに引きずり込まれてしまう。馴染みやすさが全然違うし、加えて、サスペンスで無理に盛り上げなくとも観客を惹きつけることができる。結果として豊かなドラマ性が生まれ、モンスターものなのにホラーというジャンルに収まりきれない異色作となっている。  またあの怪物の大きさがイヤだ。大きすぎず小さすぎず、ありえないんだけどありえそうな、ちょうどいいくらいのサイズ。クモザルみたいにひょいひょい移動するあの動作も巣に餌を溜め込む習性も、なんだかもっともらしくて、妙な説得力がある。  そして怪物が生まれた背景には人間の浅はかさがあるというテーマは大昔の『ゴジラ』からあるものだけど、これほど怪物よりも人間の怖さを思い知らせてくれる作品も珍しい。軍隊なんか全然頼りにならないどころか、隠蔽するために危害を加えてくる始末。ここらへんのリアリティなんかもう、気色悪いくらいである。  エンターテインメントなのにシリアスで、シリアスな割にはエンターテインメントしている。バランス感覚が絶妙というか、独特だ。すべてにおいてそうで、音楽や映像のセンスもけっしてB級ではないのに気取りすぎてもいない、ほんとうに絶妙な加減にとどめている。  この妙なリアリズムからいってもベタなハッピーエンドはありえないと思っていたので、この結末には素直に納得した(少なくとも、個人的には)。怪物に襲われても政府に踏みつけにされても結局は生き残る庶民のたくましさ、雑草魂が印象付けられる、いい結末だったと思う。米国の責任問題を報道するニュース番組を、「つまんないから」の一言で消してしまう、あの図太い神経。ああ、大丈夫なんだな、何があってもこいつらは生きていけるんだな、という安心感があった。  ハッピーエンドとも言い切れず、かといって救いがないわけでもない。ここでもやはり不思議なバランス感覚が発揮されている。
[DVD(字幕)] 9点(2007-01-29 15:14:25)(良:2票)
9.  空中庭園 《ネタバレ》 
家族ものかと思ったら……サイコサスペンス?! 目新しい設定ではなく、中盤の流れもどこかで見たような感じのネタが多い。ラストのまとめ方が比較的上手かったので腹は立たなかったけれど、あまり良いとは思わない。  とくに悪い意味でマンガ的というか、あまりにも大仰で過剰な表現が目立っていた。  たとえば、あの携帯をくるくる回している男はいったい何者なのか。なまっちろくてぷよぷよのお腹にださいタトゥーして、「バビロンにようこそ」ってあんた……笑っちゃったよ。あと、おばあさんが殺し屋のような動きでソニンをぶちのめす場面。あのシーンだけ全体から浮いていると思う。格闘漫画じゃないんだから。ていうかソニンの顔に煙草の火を落とす前に、孫を殴れ。  血の川が流れるシャイニングみたいな映像や、泣き叫ぶ小泉今日子の姿には正直、失笑してしまった。もっと抑制を効かせたほうがいいんじゃないだろうか。  それに母親と娘との間にある根深い確執が、娘の思い込みが強かった、という説明でああも簡単に氷解してしまうのは、いくらなんでも強引過ぎる。歪んだ母娘関係というものを実際に目にしたことがあるけど、真面目な話、あれはとんでもなくやっかいなものだ。そう単純に片付けられてたまるかよ、と思う。  おおまかな話の筋は良かった。しかしテーマにしても表現方法にしても、もう少し突き詰める余地があると感じる。
[DVD(字幕)] 5点(2007-01-01 15:13:21)
10.  クラッシュ(2004) 《ネタバレ》 
ほとんどの登場人物が善人とも悪人ともいえない人物に設定されているのがいいと思う。悪党に見えた人間が他人を救い、逆に善人に見えた人間が罪を犯してしまう。真に邪悪な人間はいないのに、いつのまにかいがみ合い、憎み合っている。完璧な者は一人もおらず、それぞれが欠点を負っている。積極的な人種差別というよりは、誰もが抱えている不幸の数々がやり場を失って、差別という形で発露している。小さな悪意が交叉し、誤解と偏見が連鎖し、やりきれない出来事を積み重ねていく。どんな人種でも、そういう意味ではみんな平等に人間らしく、不幸だ。   ところがこの映画では、そんな暗い世界をささやかな奇跡の数々が切り開く。なぜなら人間は欠点を持つのと同じように長所も持ち合わせていて、ちょっとした偶然から善意が交叉するときだってあるし、ときには理解し合うことだってできるからだ。救いがたい悲劇に転ぶことがある一方で、良い方向に転ぶことだってある。そういう意味でもみんな平等に人間らしく、幸福になれるチャンスを持っている。  この映画が提示する希望はとても控えめではあるが、それだけに力強い存在感を持っているように思える。
[DVD(字幕)] 8点(2006-08-09 15:58:33)(良:1票)
11.  蜘蛛女(1993)
生ぬるい。レナ・オリン演ずるモナ・デマルコフについては、確かに強烈ではあるけど、もっとずる賢くもっと邪悪にできただろうにと思ってしまった。主人公が破滅する過程だってもう少し壮絶なものを期待していた。強引な脚本は練り込みが足りていないし、映像的な見所もほとんどない。全体的に物足りなく、不完全燃焼に終わってしまった。どうせなら中途半端にではなく徹底的にむちゃくちゃやってほしかった。――って、他のコメント見るとそう感じたのはどうやら自分だけらしい。馳星周だの新堂冬樹だのの読みすぎで感覚が麻痺しているんだろうか。すいません、きっとまともな感覚の持ち主なら楽しめるのだと思います…
[ビデオ(字幕)] 6点(2006-03-27 00:12:10)
12.  グレムリン
こういうちっこくて怖いんだか可愛いんだかよくわからないモンスター、最近は見ませんね。強力なモンスターや不死身の殺人鬼も怖いけど、一匹一匹はたいしたことないやつらが集団で襲ってくるとそれはそれでやばい。下手に恐ろしげな怪物を作るくらいなら、グレムリンみたいな個性的で愛嬌のあるキャラクターを創造すべきでしょう。アイディア賞ということで+1点おまけ
[ビデオ(吹替)] 8点(2006-03-18 22:25:06)
13.  くりいむレモン
空の美しさが印象的だ。冒頭で妹が一人歩いている上空を、電線が斜めに区切っている。こういう絵作りの上手さは絶妙である。画質がVシネっぽくてチープ残念でならない。   北野作品のように間の長い映画ってちょっと苦手なんだけど、これはかなりリアルだったのですんなり観られた。沈黙の多いタイプの作品としては成功している方だと思う。   たとえば妹が電話を終えた直後に「ユウスケさんがお兄ちゃんのこと変態だって言ってたよ」と報告し、ヒロシ(兄)は軽く動揺し、声が上ずる場面。たぶん、〈え? 何? 俺が妹にちょっと惹かれてるってあいつは気づいてて、妹に言っちゃったわけ? いや、まさかそんなはずはない。でも…〉というようなことを考えていたんだと思う。気づかれていないは思いつつ、後ろめたいことがあるので確信はもてず、発言がどことなく不自然になる。この微妙な心理描写に、目が釘付けだった。主人公の気持が手に取るようにわかるのだ。それどころか、二人とも言葉がカミカミで会話のキャッチボールが微妙に成り立たない、という現実にはありえても映画ではついぞ観たことのない場面もある。   たいていの映画ではこぎれいな台詞を噛んだり被ったりすることなく応酬するものであって、ここまで現実的な間の悪さ、ぎこちなさを再現しようとはしない。このひねくれたリアリズムが非常に斬新に感じた。原作はおそらく典型的な男の願望充足ストーリーなのだろうが、それをここまでリアルで繊細なドラマに仕上げてしまう監督の技量に感動した。地味だが、細やかな心の動きを感じさせる良作だと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2006-02-03 16:19:26)(良:2票)
14.  蜘蛛女のキス 《ネタバレ》 
現実でも映画でもごついオカマには良い役回りは割り当てられないものだけど、本作のモリーナはよかった。悲惨だけど、美しい役だ。ウィリアム・ハートはたくましい男性の殻を着た可愛らしい女性を見事に演じており、下手な女性以上に女性らしかった。たった一晩だけ愛する人と結ばれた後に待つ、あまりにも悲惨な末路。胸がきりきりと痛んだ。
[ビデオ(字幕)] 7点(2006-01-28 01:46:57)
15.  蜘蛛巣城 《ネタバレ》 
序盤はやや冗長と感じたのだが、鬼気迫る終盤でささいな瑕疵など吹き飛んだ。これほど壮絶という形容がふさわしい作品はない。運命に絡めとられるように破滅へと突き進む武時の姿から一時も目を離すことができなかった。『七人の侍』などに比べるといささか寓話めいてはいるが、もっと知名度が高くてもいいはずだ。  森に棲む妖婆の怖さは『妖怪百物語』の置いてけ堀の下りを思い出させる。が、はっきりいって怪奇映画であるあちらよりも怖い。そして皆さん言及しておられますが、なんだかんだいっていちばん邪悪な奥方、山田五十鈴さん。あんた怖すぎるよ! 夢に出てきちゃうから! あんまり怖いので森の化生が憑依してるのかと疑ったくらいだ。  何の前知識も無しに観たために、三船敏郎が矢の雨のなかでの絶命する場面には口があんぐり。かっこいい決め台詞を言わせたり堂々とした態度をとらせたりせずに、みじめに悲鳴をあげて這いずり回るのが非常にリアル。すさまじい迫力だった。『俺たちに明日はない』のボニーとクライドが銃弾の嵐を浴びる場面に勝るとも劣らない名場面でしょう。  個人的には『七人の侍』よりも好きかも。登場人物に温かみがない分、白と黒だけで映される荒涼とした風景が胸に沁みる。なんともいえない虚無感が閉幕後もしばらく後を引くのです。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-06 15:43:27)
16.  グッドフェローズ
強力な伝染病の話を思い出した。致死率が五割を超えるエボラ出血熱の一種は、宿主たる人間が減りすぎて、病が広まる前に死に絶えてしまったのだ。並外れた攻撃性は諸刃の刃となる。  ちょっとした気に食わないといっては人を殺し、分け前が惜しいからといってはまた殺す。ここまでくると凄みがあるとかいう以前に、バカである。いくら非合法組織といえど、信頼関係もなく裏切りを当然のものとすればいずれ組織が立ち行かなくなるのは目に見えている。「道から外れたものはすぐに殺し、恐怖で統制を取る」という台詞があったが、逆効果だ。恐怖がもたらしたのは疑心暗鬼と混乱、そして破滅。頭の悪いチンピラの物語は『ゴッドファーザー』のようにかっこよくはないものの、徹底したリアリズムには惹きつけられる。  ただ実話だから仕方ないが、終盤が退屈。麻薬が絡み始めてから失速し、尻すぼみに終わってしまう。つかみは素晴らしいし、趣味のいい音楽にのせて流れるストーリーはなかなか楽しめたのに、終わり悪ければ全て悪し。結末で一気に評価が下がった。
[DVD(字幕)] 7点(2005-12-08 06:26:37)(良:1票)
17.  クライモリ(2003)
この映画がすごいのはストーリーの主軸に全然新味がないのに、観せ方で斬新な作品になっているということ。 カップルが殺されるだけの冒頭シーンはロッククライミングを絡めただけで見ごたえのあるものになっていたし、同じく高所で行われる樹上の攻防シーンもスリルがある。走って逃げるだけの普通のホラー映画と違って、アクションシーンが立体的。休憩してしんみりする場所が滝の内側というのも、よく考えてあるなぁという感じ。森という舞台を、最大限に生かした脚本だ。 殺人鬼が三人いて、それぞれに個性があるというのも面白かった。外見が地味で(ロード・オブ・ザ・リングにいっぱい出てなかった?)怖くないのが玉に瑕ですが。 昔からあるストーリーの骨格を新しい材料で肉付けしただけで、こんなに面白い! 大傑作とは言いがたいけど、充分に水準を満たしていると思います。
[DVD(字幕)] 7点(2005-06-08 00:56:51)(良:1票)
18.  グロリア(1980)
オープニングといい音楽といい、かっこいい。とくにニューヨークの描き方は印象的だった。ドライで冷たく、どことなく寂しい。大都市が叙情に満ちている。渋い。ただ、渋さの度が過ぎて、地味になってしまったように感じた。このシンプルな話にたっぷり時間をかけているので話がだれた部分もあったと思う。 『レオン』や『セントラル・ステーション』の原型と聞いていたので、期待しすぎていたのか。いい要素はいっぱいあるのに、いまいち入り込めなかった。あんまり時間がないときに観たのが悪かったのだろうか? もっと腰をすえてじっくり観るべき映画だったかもしれない。
[ビデオ(字幕)] 5点(2005-04-05 12:01:06)
19.  グレン・グールド エクスタシス
グレン・グールドというととにかく変人というイメージがあったが、ちょっとそのイメージが変わった。いや、確かに風変わりなんだけど、「変わっている自分が好き」で、わざとそうふるまっていた部分もあったんだなあ、と。それは理解できるし、とても人間らしいと思う。また、人間嫌いで演奏会をやめたと聞いていたが、その前知識も不正確だったようだ。彼が演奏会をやめたのは偶発性や失敗を極端に嫌ったからで、観客が嫌いだからではなかった。集団で目の前にいる聴衆が苦手だっただけで、むしろ美しい音楽を聴き手に届けるためにあえてレコーディングという手段を選んでいた。単なる奇行ではなく、優れた知性で方法論を突き詰め、自らの美意識に忠実であろうとした結果の行動だったのだ。そこにあるのは狂気ではなく、芸術家の情熱だ。グールドは人間離れしていたが、それはけっして非人間的だからではない。その人間性のすべてを音楽に傾けていたからだ。 (ところでこれ、映画ですか? 短すぎてもの足りなくて、それが点数に反映してます)
7点(2005-01-23 06:26:35)
20.  暗くなるまで待って
犯罪者たちがなんでこんなに手の込んだ計画をたてて主人公を騙す必要があったのかがわからない。最初からオードリーを拘束、拷問して人形の場所を吐かせればすんだ話じゃないの? 共犯二人は最初から殺す予定だったって? 盲目の女性一人を殺さないためにあんなに入念に準備しといて、二重殺人の危険を平気で犯すわけ? 共犯を引き込まずに単独でオードリーを殺した方が楽だろう。ことを穏便に済ませようとしているわりには人を殺しすぎ。あと、他の方がおっしゃっているけど、犯行に気づいたオードリーはなんでその時点で人形を渡してしまわないのか。相手があんなにまわりくどい方法を取っているんだから、人形を渡してしまえば危害を加えずに立ち去るのはわかるはずでは? 頭いいんだからさ。よく練られた脚本だが、よく練られている割には納得がいかない。
4点(2004-08-30 22:58:28)
010.21%
161.23%
261.23%
3163.29%
4255.13%
5336.78%
610521.56%
712225.05%
810922.38%
95310.88%
10112.26%

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