1. JAWS/ジョーズ
父に連れられ、有楽町の丸の内ピカデリーで鑑賞。小学生の時である。 今でも鮮明に覚えているのは、幼い私がそれだけ決定的に映画の力を魅せ付けられたからだろう。 あれから数十年、この傑作をあらためて鑑賞して、唸ってしまった。 冒頭、女性がいきなり襲われるも、鮫の姿そのものは見せずに引っ張り続ける。 凶暴な人食い鮫に、人命が危機にさらされているというのに、頑迷な町の権力者に阻まれて何もできない主人公の焦燥。この見えない敵に怯えるサスペンスフルな前半の、傑出したカメラワークによる周到な演出。 後半では、未だ生々しい襲撃シーンをみせることなく、その恐怖をロバート・ショウ演じる漁師によって克明に語らせる、背後には正にその敵が迫ってきている。 このシークエンスによって、観るものの脳内に恐怖を増幅させる。 とどめには「喰らえ、化け物」で、味わうかつてないカタルシス。ドーパミンも大放出だ。 余談ながら、この時のロゴ、ポスター、プログラムのデザインの説得力も、忘れられない。文句なしの娯楽映画の頂点だ。 10点(2004-04-21 14:47:16)(良:1票) |
2. 十二人の怒れる男(1957)
あらゆる法廷モノの中でも群を抜いている不朽の名作。素晴らしい脚本と、着実な演技、豊かな発想の演出、この3つが揃ってしまうと、このシンプルな設定でも、こんなに凄いものが出来上がるのか、という意味で衝撃的ですらある。息苦しくなるほどのスリリングな展開のエンターティメントの中に、民主主義の理念を示した監督の志にはまったくもって敬服する。成熟した民主主義とはつまり、少数の権利をどう考えるかということであり、結論に至る過程こそが重要だという、極めて深いテーマを、短い時間で明快に描いている。しかし、これを上回る法廷モノ……。いつ出てくるんでしょう?※見事に描き分けられた12人のキャラクターについては、【へちょちょ星人】さんのコメントに思い切り楽しませていただきました。かけ寄って話し掛けたい気分ですぅ。 10点(2003-05-03 13:25:22)(良:1票) |
3. ショーシャンクの空に
全編を通して、まったく非の打ち所がない、名作。誰にでも勧めたいし、誰が見てもきっと楽しめる、極上の作品。何を言ってもネタばれになりそうなので何も言えません。できるだけ予備知識ゼロで観ることをお勧めします。 10点(2003-04-15 11:21:58) |
4. 人生万歳!
ウディ・アレン節炸裂、抱腹絶倒のパワフルコメディ。 この映画をべた褒めしたら、ちょっと色んな意味でひかれるかもしれないけれど、とにかくわたしは大好き。 変化を恐れず、苦難を笑い飛ばし、強引にハッピーを手に入れる登場人物達の清々しさに、おおいに励まされた。 75歳の巨匠はまだまだ健在である [CS・衛星(字幕)] 9点(2011-09-05 12:41:21) |
5. 地雷を踏んだらサヨウナラ
結果だけ見れば悲惨といっていいはずの若者の晩年を描いていながら、不思議なほど主人公の内的葛藤や戦場の恐怖に戦慄するシーンが少ない。 浅野演じる泰造は、一時帰国した折、家族の前で、実にあっけらかんと血生臭い戦場の様子を語る。 そんな筈がない、という人もいるだろう。実際の一ノ瀬氏はどうだったのかわからない。しかし私的には、この主人公の様にとてもリアリティーを感じた。 もしかすると一ノ瀬は戦場に身を置いてはいても「命を賭して」などというつもりは全くなかったのではなかったか。 功名心、憧憬、無自覚かもわからないが使命感などの、色々な思いが混沌としている中、押さえられない情熱に従っただけだったのではないか、などということを思いながら観た。 うそ臭いヒロイズムに流されず、浅野忠信は、実にうまく演じていて素晴らしい。 私が見た、一ノ瀬氏の写真の印象に違わない、優しさのあるいい映画だった。 9点(2004-05-13 20:57:38) |
6. 12人の優しい日本人
こりゃあ面白い。いかに日本人が議論下手とは言え、議論どころか学級会にすらなっていない前半部分は「いいかげんにしろよ(怒)」状態で観ていましたが、後半、見事にひきこまれます。最後のオチもきっちり本歌取りになっており、脚本の巧みさに唸らされます。本家ハリウッド版をこよなく愛する私としては、今まで観ず嫌いだったことを、猛省いたしました。 9点(2003-12-24 11:42:28) |
7. 情婦
アガサ・クリスティの原作を、ビリーワイルダーが映画化。 良い素材を、最高のシェフが、最適な調理法で仕上げたとも言うべき本作。 緊迫の法廷劇を、個性豊かな登場人物とユーモアで、一気に飽きさせずみせます。 それにしてもビリーワイルダーのコメディセンスは素晴らしい。 およそ半世紀前とは思えぬテンポの良さで、ばりばり現代っ子のうちの娘たちをも魅了してしまうのだから。 上質なものは色褪せないという良い見本ですね。 9点(2003-12-20 13:49:35)(良:1票) |
8. シンドラーのリスト
オスカー狙いとの指摘もあるようですが、私的にはスピルバーグがその強烈な使命感により生み出した作品という気がします。モノクロの映像のシンとするような美しさと、ラストの赤が強烈な印象。芸術的に大変優れた作品だと思います。 9点(2003-04-06 12:12:32) |
9. しあわせの隠れ場所
感動できる実話モノでありながら、ひとつひとつのエピソードが軽妙にテンポよくさらりと描かれているのが感じ良い。 セクシーな肝っ玉かあちゃん役のサンドラ・ブロックが啖呵切る姿はホントにカッコいい! [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-09-15 19:55:10) |
10. ジョニー・マッド・ドッグ
冒頭からものすごく衝撃的だ。 反政府軍の少年兵らが集落を襲撃し、暴力と略奪の限りを尽くす。まさに悪夢である。 狂犬のジョニ―と呼ばれる15歳の少年兵を中心に、映画と知って観ていても大変ストレスを覚える程の底なしの悲惨を手持ちカメラの映像は映し続ける。 彼らの暴力の犠牲者はもちろん悲惨だ。しかし、幼い時から親と離され、一切の情愛や教育の機会をはく奪され、戦うマシンとして生きるしかなかった彼ら少年兵の悲惨もただごとではない。 市民から奪ったブタに情が移ってしまって食べようとする仲間から必死で庇う少年兵のシーン。 押入った先の高校教師に「馬鹿にするな!俺は小学2年の時、3年の勉強をしていた!」と、銃を突きつけるシーン。 ラジオから流れるキング牧師の演説も知らず、国連や赤十字にさえ恫喝して見せる、彼らの幼さに度々胸が詰まる。 並行して描かれるもうひとつのストーリーは、彼らの暴力によって家族や生活を奪われる少女の姿。 弟や父を守ろうと奔走し、不幸の中で祈り、他者に手を差し伸べる。 この映画の中で唯一見出される「良心」として、彼女の美しさは際立っている。 国や地域を特定しなかった監督の意図は、これが「どこかで起きた物語」ではなく「今もどこかで繰り返されている出来事」であることを伝えるためだとか。 そして、出演者は皆、現地のオーデションで選出された「元少年兵」だそうだ。 かなりヘヴィな作品だが、この現実を映像で観る価値は十二分にある。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-09-15 18:57:26) |
11. 下妻物語
どのカットも隅々までしっかり画作りされているんだけれど、私にはどうしてもこの監督の色彩感覚やセンスがあまり映画的とは思えない。 でも本作にはそのテイストさえも合っていたように思う。 オープニングから繰り出される小ネタは文句なしに笑えるし(ジャスコや尼崎、そして水野晴郎のくだりでは声をあげて笑ってしまった)、ストーリーやキャラクター造形もしっかりしており、大変楽しめた。 自分の美学をしっかり持って周囲に迎合しないヒロイン達は本当に魅力的で、二人の体当たりの演技も素晴らしく、ゴスロリが完璧にハマってた深キョンにも、淡い初恋に涙する土屋アンナにも完全にやられた。 痛快で爽快な快作。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-08-20 00:17:32) |
12. 知りすぎていた男
ものすごく個人的なことだけれど、まだ幼かった頃、映画好きな父に連れられて名画座でほとんどのヒッチコック映画を観てしまったことは私の悲劇だと思う。 本作にしても、今、観直してみたら、小道具使いや、序盤で張った伏線が後半できっちり結実している点や、はく製屋でのドタバタとジリジリするスリリングな展開の緩急など、ただならぬ演出の巧みさに唸らされる。 こういう事を感じ取れるほど成長していなかった当時の私は、ただドリス・デイの歌声の美しかったことくらいしか印象にない。 まぁしかし、3歳からピアノを習わせ、5歳でケストナーを読ませ、小学生で名画座通いをさせた私が、まったくそれらの体験を生かすことなく、ただの普通の人になったことが、父にしてみたら一番の悲劇かもしれない…などと思いながら楽しく再見した。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-08-19 11:26:44) |
13. 16ブロック
《ネタバレ》 これといって目を引くアクションや派手なドンパチはないけれど、きっちり緊迫感を保つ巧みな演出と、ブルース・ウィリス×デイビッド・モースというコンビの妙で、最後まで一気に魅せられます。 ニューヨークの街中の16ブロックという限られたフィールドをタイムリミットまでに、とテンポ良く進む物語が良いし、なんといってもアクションスターのオーラを消したブルース・ウィリスが演じるくたびれた刑事は、なんだかとてもセクシーで私の好み。どストライク。 今どきのサスペンスなら、モス・デフ演じるエディが実は一番の悪人で…なんて捻ったオチもありがちですが、そうはならない後味の良さもいい。 思いがけず「いい映画見つけちゃった♪」と鼻歌がでる1本でした。 [DVD(字幕)] 8点(2011-05-23 16:51:24)(良:1票) |
14. 紳士協定
「差別」この人間社会における普遍のテーマに対して、真っ向から取り組み、差別の構図に肉薄した、骨太な社会派映画である。私の心に深く残っている作品だ。 「差別的な行為を傍観することはそれに荷担したことになる」本作の中でグレゴリー・ペック演じるフィルは言う。 至極尤もで反論の余地などない。 しかし、このような「正義」を振りかざすことは、また次の争いや差別の種になるということも、一方で悲しい現実であるということは言えないだろうか。争いは常に正義と正義のぶつかり合いである。 「差別」の原因・背景については掘り下げることがなかったという点もやや残念だ。 とはいえ、先述したように、決して浅はかなものにはなっていない。 この難しいテーマを、極めて真面目に誠意をもって取り組んだ本作を、私は称えたいと思う。 翻って、この素晴らしい作品を観て、カザンの生涯を思うとき、あらためて思うのだった。「正義とは自分の良心にこそ、突きつけるものだ」と。 8点(2004-04-20 16:59:10)(良:2票) |
15. シックス・センス
この手の映画を観ると、いつも自分が愚鈍であることに感謝する。最後までオチは読めず、したがって非常に楽しめた。オスメント君の巧みな演技のおかげで充分すぎるほど恐怖も味わえたし、親子の愛、夫婦の愛にもホロリとさせられた。 ホラーの要素と、ヒューマンドラマの調和も完璧で、冷え冷えとした画も良い。秀作。 8点(2004-04-05 18:11:43) |
16. 春琴抄(1976)
百恵・友和の映画はほぼ全て当時劇場で観ましたが、中でもこれは特に好き。佐助の究極の愛の姿にエロスすら感じた11歳のワタシなのでした。 8点(2003-11-19 10:45:07) |
17. ジュラシック・パーク
さすがスピルバーグ。命を持った(かのような)リアルな恐竜を見せてくれただけでもエンターテイメントとしては一流。スピルバーグにこんなことやらせたら誰も勝てっこない。まったく解せないことに、ここでは評判が滅法悪いスピルバーグ監督だが、一映画ファンとして私はどう考えても、彼の非凡さを認めないわけにはいかない。 8点(2003-05-31 14:30:58) |
18. シコふんじゃった。
気楽に笑えて、ジーンと来る。しょぼいアイドルモノばっかの、日本の青春映画の中でも郡を抜いた良い作品でした。 8点(2003-04-08 11:20:09) |
19. シャッター アイランド
配給会社の「だまされるな」という宣伝にだまされると痛い目を見る。 トリックが事前に予想できても十分に楽しめるだけの、演技と演出のクオリティだった。 ゾンビになってしまってでも忘れてしまいたいくらいの哀しみの深さを示したラストシーンが印象的。 [DVD(字幕)] 7点(2011-09-16 20:39:31) |
20. 処刑人II
前作を観た時、自分的にはそんなに高評価じゃなかったってのに、Ⅱも観ちゃうってことは、意外とハマってたのかもしれない(笑) 今作もマクナマス兄弟のバカっぷりは健在で、性懲りもなく映画ネタやロープを必要以上に使いたがったり、大事な場面で兄弟喧嘩もしちゃう。 銃撃戦は相変わらずカッコよくて痛快だし、前作のファンは十分楽しめたと思う。 しかし、いかんせん10年は長すぎて、さすがの兄弟もちょっと美貌に翳りがでたこと、それに何と言っても前作では主役を食う勢いだったウィレム・デフォーの穴は埋めがたく、その点がやや残念。 [映画館(字幕)] 7点(2011-09-11 00:17:33) |