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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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221.  レヴェナント 蘇えりし者 《ネタバレ》 
冒頭でまずレオナルド・ディカプリオがほとんど瞬きをする事なく銃を撃つショットに少し驚き、この映画で彼はほとんど瞬きをする事が無いだろう事を なんとなく予感しその通りに進行していくのだが、そのディレクションの意味も中盤でより明瞭となる。  スコープサイズ画面の半分を遠景、半分を極端なクロースアップで占める構図の多用によっても、人物や動物の見開いた眼へのこだわりは特徴的だ。  もっとも、目を瞑る度に妻や息子の回想シーンや気取ったイメージショットが頻繁に現れてはドラマを引き延ばしにかかる訳だけれど。  そうした中、アルフォンソ・キュアロン『トゥモローワールド』の長廻しからさらに難易度を高めたアクションシーンの機動的なワンショットは やはり圧巻である。 樹上からの人体落下、顔面を貫通する矢、林間の乱戦から騎馬戦への視点切り替え、それらを繋いでゆく高難度のカメラワークの合間に陽光を瞬間的に入れ込んで生々しさを際立たせるところこそルベツキの本領だろう。  評判のよい「美しい景観」のロングショットはただ美観にとどまる限り、それ以上のものにはならない。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2016-04-29 21:48:23)
222.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
突然の奇襲で登場人物共々に観客を驚かす。ショックとサプライズの類が主であって、ヒッチコックが語るところのサスペンスのように、 ある種の感情を揺さぶってくるものではない。前半の、複数の人身事故を組み合わせた長廻しモブシーンなどはその状況に引き込んでいく上で 有効だと思うが、後半もそればかりでは単調にならざるを得ない。  折角、有村架純が手渡すお守りのエピソードををつくりながら、それを有効活用させないのは怠慢だし、 そこで流れる歌曲の用い方もさして芸がない。大泉を危機から救うのはブランド時計などではなく、こじつけでもあのiPodであるべきだろう。 そんなだから、三者の間にもドラマが生起せず感情を刺激されることもない。   ドラマを小状況に限定したのはいいとして、モールの構造や空間・設備も十分に活かしきれていない。それは屋上から地下駐車場までの位置関係と経路、 ラストの三つ巴状況の位置関係とギリギリの距離感をレイアウトの中で明瞭に示せていないという事であり、これまたサスペンスを生めていない。 同様に、劇中でのZの群れを有限でカウント可能なものとしてしまうのなら、残弾数のカウントダウンでもってサスペンスを演出すべきかと思うが。
[映画館(邦画)] 5点(2016-04-28 23:28:35)
223.  ボーダーライン(2015) 《ネタバレ》 
高空から撮られた地表や街並みのショットが、ただそれだけで静かな不穏と緊迫を醸し出す。 スコープサイズの画面に美しく広がる地平線と独特の雲とトワイライトは、血生臭いドラマと対照を為す形で印象深い情景を見せつけてくる。  銀行の監視カメラ映像、暗視スコープ映像など、様々な媒体の挿入も効果的に決まっている上に、環境音に似せたBGMも画面から浮く事がない。  中盤のバーでのジョン・バーンサルや、ベッド脇に置かれた札束バンド、そしてラストのベランダで銃を持つエミリー・ブラントなど、フォーカスを巧妙に外すことで逆にそのぼやけた対象を強く意識させ観客に注視を促すという、サスペンスと情感の演出にもついつい乗せられてしまう。  べニチオ・デル・トロ自身の佇まいもさながら、特に後半の彼が凄みを増していくのは、暗闇と影を相乗的に活かした撮影にも拠るところも大だろう。 レースカーテンの揺れる奥に佇むデル・トロ。彼の表情に落ちる陰影の黒味は彼の内面を見事に具象化している。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-04-27 20:56:02)
224.  フィフス・ウェイブ 《ネタバレ》 
大状況の収拾を放棄するのならば、いっその事その中でヒロインが熊のヌイグルミを弟に届けるドラマにもっと特化すれば良かったのに。 かなり単純な謎解きに加え、特に肝心なクライマックスとなるべき基地潜入後の大雑把さはかなりキツい。 いくらでも危機状況とサスペンスを創り出せる状況にありながら、それすら放棄しているように見える。  冒頭シーンから、若者が銃を持つこと・撃つこと・撃たれることの重みにも拘って描写しているのがわかるが、 ならばそのテーマについてもヒロインの行動を以て何等かの映画的回答をして欲しいとも思う。 単にヒロインの大腿を見せる為だけのマクガフィンでは駄目でしょう。  徴兵制の批評も、やるならもっと痛烈にやって欲しい。  さすがに食傷気味となってきた災害によるカタストロフィとデストピアのビジュアル・エフェクトだが、 津波体験者の方にとってはトラウマを蘇らせる映像かもしれない。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2016-04-24 22:04:41)
225.  ルーム 《ネタバレ》 
部屋内の様々な家具に順々に朝の挨拶をする冒頭と、順々に別れの挨拶をするラスト。 きっちり釣り合った優等生的な脚本ではあるが、あの頃の自分は・・的なナレーションで回顧するラストの少年の老成ぶりには オトナの作為も強く感じられてしまう。  その脱出劇の宗教的換喩も紛れもなくシナリオの聡明さを示すが、どうもラストの達観した少年像は作り手の観念を具現しすぎているふうだ。  少年の目線として様々な事物や表情が大きくクロースアップされる前半のレンズはわかるとして、脱出後の世界の拡がりが効果的に視覚化されて いたかというと、後半も印象の弱いショットサイズが続くので物足らない。  小さな天窓のスケールから大きく拡がった青空の大きさ。友達とのサッカーで駆け回るフィールドの奥行き。それらへの驚きと感激を少年の目線を通して もっと感じさせて欲しい。  脱出劇では、シーンを状況説明するショットとサスペンスを優先させたか。ここももっと少年の主観に寄り添って欲しいところである。  映画の中盤、赤色灯が舞う雪に濡れたパトカーの車窓越し、水滴で滲んだ母親の像が必死に駆け寄ってくるPOVショットなどが感動的だ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-04-18 22:13:49)
226.  モヒカン故郷に帰る 《ネタバレ》 
島のところどころに腰掛け、メインキャストらと自然体であいさつをかわす島のエキストラがいい。 夫のガン告知を受け、台所で悄然としているもたいまさこの背中のショットに聞こえてくる、下校途中らしき子供たちの声。 木場勝己と将棋をさす柄本明の病床に聞こえてくる波音。あるいは鳥のさえずり、犬の鳴き声、枝を剪定する音など、 オフの音響の豊かさも各シーンの情趣や哀切をポリフォニックに、ときにユーモラスに盛り上げる。  贔屓の球団がサヨナラ勝ちしたプロ野球中継を見ているところに一旦帰郷したはずの松田龍平と前田敦子が突然戻ってきて、もたいまさこは嬉しさを隠せない。 野球以上に2人の帰宅が嬉しいのだが、画面は彼らをナメて、あえてテレビ中継画面のほうをフォーカスする。 あるいは浜辺のシーン。柄本の言葉に涙ぐみそうになる松田だが、その感極まるシーンでカメラは彼らの背後にまわり、 砂浜に座る2人の背中と海のショットに切り替える。  主人公の押し付けがましい大泣きを感傷的なアップで撮りたがる最近のメジャー邦画をさんざん見させられていると、 こういう節度ある演出が新鮮に思えてくる。 地元球団のファンという設定を、こうした情動を盛り上げるワンシーンのために用意するのがにくい。  主人公家族の乗る車のナンバーはしっかりと「830」。細部も凝ってくる映画なので、画面をみるのも楽しく、 沖田監督らしい食事シーンの豊かさもいい。刺身や竹輪の単品料理に四苦八苦していた前田が、 めんつゆを介して雑多な野菜を煮物として調和させていく。ささやかながら映画のモチーフとの絡ませ方も具体的だ。  病院での結婚式。雨だれが反射する室内のショットは芦澤明子の真骨頂といった感じである。
[映画館(邦画)] 8点(2016-04-14 00:57:11)
227.  アンジェリカの微笑み 《ネタバレ》 
表記はないけれど、映し出される河川は例によってドウロ河なのだろう。 テレビは見当たらず、不鮮明なラジオ音声が流れる劇中の時代は如何様にも受け取れる。 夜、夜明け、そして雨上がりの日中と移り変わる川岸の街並みの風情はどこか神秘的な様相も呈し、 対岸にある丘陵斜面のキアロスタミ風ショットは彼地の風土を強く印象づける。   人物がフレームアウトした後も黒猫がじっと鳥かごを見つめている。 撮る側も猫のリアクションを息を殺して期待していたに違いない。  中央にドア、あるいは窓を配した屋内ショットは凝った照明設計によって濃密な空気を感じさせている。
[映画館(字幕)] 7点(2016-04-05 17:27:36)
228.  あやしい彼女(2016) 《ネタバレ》 
すべり台からフラフープまで、多部未華子が若さ爆発のくねくねダンスと弾けた顔芸を披露し、 アーケード街を梯子しながら髪型と衣装を替えていく横移動など、フィジカルな楽しさのある前半がいい。 ヘップバーンになりきっての溌剌ぶり・お転婆ぶりをもっと見せてくれると尚良かった。 日韓相通ずる親子の感傷劇が基調となる後半になると、台詞頼りのシーンも増え、BGMの出張りや脚本の粗も気になりだしてしまう。  小林聡美、志賀廣太郎ら脇役陣も好演しているし、 ソファで酒盛りする多部と要潤の長廻しの芝居など、ユーモアと情緒が調和したいいシーンもそれなりにあるのだが。  多部の歌唱の巧拙などは全く問題ではなく、そもそも音楽自体がここでは単にドラマの装飾に留まっているのが惜しい。 ライブシーンも、観客の段取り臭い整然とした熱狂ぶりに興ざめしてしまう。
[映画館(邦画)] 5点(2016-04-03 00:30:45)
229.  先輩と彼女 《ネタバレ》 
部室の窓際が映画のメイン舞台である。 タイトルバックでは画面左手の窓枠に座る志尊淳と、それを画面右手下から見上げる芳根京子の構図が 中盤から少しづつその位置関係を変化させ、ラストでそれを逆転させる。 乗り越えられる窓、揺れるカーテンと風鈴、逆光気味の白バックなどがここで活かされる。  序盤はファンタジック調の浮つき気味にみえる画面に不安が募るが、春から冬への季節の進行と恋愛ドラマの起伏に伴って 寒色系も織り交ぜた、しっとりした画面に変化していくのがいい。  背景の電車の進行方向も、手前の人物の感情に同調させる細やかさも見事だ。  外光を綺麗に反射させた学校の廊下、白い雲と空のショットなども丁寧に撮られている。  そして、ヒロイン芳根の天真爛漫な表情が魅力的だ。
[DVD(邦画)] 8点(2016-04-01 00:08:18)
230.  僕だけがいない街 《ネタバレ》 
状況設定と時間操作におけるいわゆるご都合主義も、開き直ってここまでやればこれも映画の特権と自分を納得させるしかない。  単に犯人探しの観点から云っても、校舎玄関でのズームを交えた主観ショット一つで誰にでも犯人の目星はつくだろうが、 それによって犯人であろう人物の善良な身振りに凄味が加わることになったと見ることも出来なくもない。  子供たちの佇まいもよく、虐待を受けている少女が石田ゆり子の作った朝食のウインナーを口にするショットなどに少し心を動かされたりもするのだが、 そこでは映画内部と外部がほどよくせめぎ合っている。が、それも長くは続かない。 少年と少女が互いに交換した誕生日プレゼント、赤い帽子と水色の手袋が何ら視覚的に活かされないのもはっきり怠慢である。 ラストで森カンナかその娘がそのプレゼントを大事に持っている、くらいのことが出来ないものか。 広げた掌、繋ぐ手のモチーフは幾度も反復しているというのに。何故、あの大樹も最後に活用するとかしないのだろう。はっきりと、拙い。  逆に、有村架純のほうには雨あがりの陽を浴びせるといった演出をもってくるのに、彼女の人物像あるいは(外部的)背景が薄いために大して心に響かない。 あれほど饒舌に語っていたはずなのに。語られる言葉が全般的に観念的すぎるのである。
[映画館(邦画)] 4点(2016-03-25 07:38:48)
231.  リリーのすべて 《ネタバレ》 
『英国王のスピーチ』でのコリン・ファースの頼りなげな映画ヒーローぶりを大きく補佐していたのが、 ヘレナ・ボナム=カーターの魅力的な映画ヒロインであり、彼女の描写あってこそ主人公のコンプレックスも魅力に転化し得たといえる。  ここでも構造は変わっていない。エディ・レッドメインを献身的に見守るアリシア・ヴィキャンデルの表情を介することによって、 二人のドラマへの共感を促さんとする。そして、彼女も明快な心理的表情でもってよくそれに応えている。  例によって、映画は表情のクロースアップ主体。それによって衣類の肌触り・触覚性もまた拡大化されている。  密会場所となる集合住宅地の無味乾燥な佇まいとパースをつけたシンメトリックな縦構図や沼地の情景など、いかにも抽象的なロングショット が時折そこに挟まれるという具合だ。  ラスト、ようやく晴れ間を見せた空に舞うストールが主人公の開放を暗示する。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2016-03-24 23:47:24)
232.  さらば、愛の言葉よ 《ネタバレ》 
劇場では見逃してしまったため、2D版のDVDにて鑑賞。よって立体映画としては評価不能だが、その分発色と彩度は鮮やかすぎるくらいで 存分に堪能出来る。 数多く登場する水面のショット、雨の夜の交通のショットなどがどう立体化するのか、機会があればでひ3Dで観てみたい。 単にレイヤー感を強調するためだけの3Dでないことは中盤の件のショットをみてもわかる。  ぞんざいにも見える傾き気味のレイアウトの妙、画面横から突然フレームインする男の暴力的な動き、イントロが何度もリフレインされるスラブ行進曲。 この音響編集がともすれば挑発的でもあるのだが、このあたりが押井守のいうところのダレ場理論にも通ずるのだろう。 「映画は快感原則をどこかで停滞させたり、裏切ったり、阻止したりすることで初めて映画になる。」という。 実際、このチャイコフスキーなどは映画を見終えてから、じわじわと来る。
[DVD(字幕)] 7点(2016-03-22 23:16:08)
233.  エヴェレスト 神々の山嶺 《ネタバレ》 
ザイルで宙吊りの相棒を見捨てるか、助けるか、を山仲間でひと悶着するシーンが脈絡もなく始まると、この後にどんなエピソードが来て、 それをどう発展させていくつもりか、誰でも簡単に読めてしまうだろう。実際その通りの展開なのだが、あまりに直截すぎて呆気にとられる。  現地ロケーションのスケールに負けまいと、情緒過多の劇伴音楽も、スターのアップも物理的スケールがデカい。佐々木蔵之介の表情とか、勘弁して欲しい。  頻繁なフラッシュバックももっと控えめにすることは出来なかったか。  厳寒の天候の中、ほぼ垂直の山肌を登攀する人物を捉えるショットは力強く、迫真性は満点である。 小さな人物と雄大な景観を極力一体として撮っているのがいい。
[映画館(邦画)] 4点(2016-03-20 18:21:37)
234.  ちはやふる 上の句 《ネタバレ》 
校舎の屋上で振り返る広瀬すずの髪が舞う。その舞わせ方とか、スローで捉えた競技カルタのショットとか、目のクロースアップとか、 モーションの造形と編集はアニメーションに近い。決勝戦で、森永悠希目がけてカルタを弾く広瀬のアクションのスローモーションに 漲る高揚感は出崎統演出のそれを思わせたりもする。  ところどころに挟まれるCG処理ショットもそうした印象を補強するのだが、ヒッチコックの『下宿人』的な床の素通しショットまで 登場するに至っては、そこまで実写の制約を取り払ってしまう必要性・必然性があるのかとも思ってしまうけれど。  この競技の(映画的)面白さが主として静から動に一気に切り替わる瞬発性にあるのなら、その瞬間を持続的なショットの中で アクションの速度の美しさとして提示して欲しいところだが、編集のリズムに頼ってしまっている場面が多いように思う。  と言いつつ、決勝戦での逆転の契機を、肩に触れる仲間たちの手と視線で処理していく流れはこちらの気持ちをよく映画に乗せてくれる。 雨天から晴天への変化を光と音のそれに変換し、映画序盤から地道に演出してきた広瀬の呼吸音をクロースアップさせて印象深い。  五人の個性もバランスよく描写してあり、クライマックスの盛り上げもしっかり出来ている。
[映画館(邦画)] 7点(2016-03-19 23:35:14)
235.  恋人たち(2015) 《ネタバレ》 
地に足をつけ、ペットボトルを踏みつぶし、自転車を漕ぎ、高台で放尿する成嶋瞳子が身体性をフルに発揮して素晴らしい。 橋梁を叩き、冷たいパンを貪り、鬱憤を溜め込んでいく篠原篤の佇まいも口舌も、見事に映画の芝居である。 闇と光と水、接触と不具。それらの主題によって、単なる観念映画とは一線を画す。  黒田大輔に思いを吐き出す篠原の叫びの痛ましさ。その表情に、劇中でただ一度カメラが一気にズームする。 それが正しいのかどうかは判らぬが、カメラも思わず自制を失い図らずも寄ってしまったという感じの画面の動揺と合わさり、心を揺さぶられる。  ラスト、青い空を背にボートに乗る男たちの、前を見つめる凛とした表情が心に残る。 カーテンの開かれたアパートの窓から陽光が美しく差し込み、黄色いチューリップ瑞々しく照らし出す。 部屋の佇まいもまた、人物の感情を見事に表象している。
[映画館(邦画)] 8点(2016-03-16 01:47:26)
236.  マネー・ショート 華麗なる大逆転 《ネタバレ》 
いかにも、グリーングラス御用達のバリー・アクロイドらしいラフな手持ちカメラが実録風を演出する。 クリスチャン・ベールの表情にズームしつつピントを合わせてみせる手つきなどが相変わらずワザトラシイ。 当時の風俗のスチルが目まぐるしくコラージュされ、饒舌なビジネス台詞の応酬に嫌でも集中させられる。  システムのいかがわしさに次第に焦燥を表していくクリスチャン・ベールの神経症気味の芝居も相変わらず達者なら、 頑固一徹を体現するスティーブ・カレルの気難しい表情も次第にヒューモアを醸していく。  当初はクセのある身振りを見せる主人公らの姿が逆に真っ当さに転換し、業界全体のアブノーマルを炙り出していく。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-03-13 08:28:36)
237.  さらば あぶない刑事 《ネタバレ》 
留置場のシーンから、二人のシルエットを浮き立たせる仙元誠三のカメラが絶妙である。 横浜の夜景の数々も官能的に撮られ、車両のワインレッドや赤提灯、菜々緒の白い衣装が美しく映える。 主演二人の掛け合いは安定感のある長めのショットで楽しませ、 カーアクションも、格闘アクションも、その動きをワンショット内でしっかりと見せ、適切に繋ぐ。 ボートを追う柴田恭平の華麗な走りも、それをおさめるカメラも、スピード感に溢れながらも安定感抜群で惚れ惚れする。 お話は陳腐でも、例え浅野温子が下品の極みでも、ベテランのスタッフ・キャストが映画のしっかりした技で二時間をしっかり楽しませてくれる。  ジョージ・ロイ・ヒルから、ジョン・ウ―、タランティーノまで、引用の数々もご愛嬌ということで。
[映画館(邦画)] 7点(2016-03-07 00:02:56)
238.  セーラー服と機関銃 -卒業- 《ネタバレ》 
順撮りだろうか。序盤はあまりパッとしない橋本環奈も感情を発露するに従い、次第にさまになっていく感じはある。 が、ラストの雛壇にしてもヒロインの魅力を引き出しきれていないように見えるのは撮り方の問題ではないか。  荒らさせたカフェの中で橋本が大野拓朗、宇野祥平と共に語り合う長廻し、 長谷川博己と手を取り並び走る二人に雨を降り注がせる長廻しなど、シネフィル心をくすぐろうという魂胆が 見えなくもないが、相米慎二アプローチもしっかり踏襲し、おそらくは不得手だろうアクションシーンも 北野武などにはまるで及ばないながらも頑張って撮っている。  全編通して光にも気を遣っており、クライマックスの派手な逆光を始めとして、軽トラックでの逃避行から夜明けまでのシーン、 武田鉄也の行く手に集結するパトカー群の赤色灯など、よくドラマに寄与させている。  ちなみに、スクリーンでの武田鉄矢を今回初めていいと思った。
[映画館(邦画)] 6点(2016-03-05 23:57:58)
239.  ザ・ブリザード 《ネタバレ》 
冒頭の車内の会話シーンから、3D映画らしからぬ深度の浅いショットとダサいピント送り、そして光量・光源不足の画面に萎える。 (ナイトシーンが多い事とは全く関係ない。) 2、3ショットで済むシーンに5、6ショット用いる不経済にも気が重くなる。  ホリデイ・グレインジャーを特権的に撮っているのは、公衆電話口で振り返らせる印象的な出のショットからして明らかだが、 彼女の出番が多い分、活劇の進行も鈍っている。だから陸のシーンは総じて退屈だが、海に乗り出して以降はようやく映画も動き出す。  ワッチから操舵盤のケイシー・アフレックまで、乗組員らが伝言を繋げていく縦移動ショットなどはなかなかの盛り上がりだ。  前半の露出アンダー気味の画面も、ようやくラストの暗闇に瞬くヘッドライトの光で報われる。 ライトを一旦消して点け直させるのは間抜けとしか思えないが。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2016-03-04 20:00:20)
240.  スティーブ・ジョブズ(2015) 《ネタバレ》 
同タイトルだけにどうしても2013年版と比較してしまうが、主人公の来歴をオーソドクスに追いかけたあちらの平凡さに対して、 後出しとはいえアーロン・ソーキンのシナリオの卓越が際立っている。  三度の製品発表会、その開幕直前の慌ただしい舞台裏を映画の場とする、挿話の取捨選択・構成が大胆である。 人物は舞台裏をアクティブに動き回り、緩急自在のカット割りと会話劇の中から人物像を炙り出していく。 過去のフラッシュバックは申訳程度に短く挟まれるのみで、映画は現在進行形を貫くが、 1984年、1988年、1998年と、画面のシャープネスを微妙に変化させているような印象もあって、時代と人物の変化を視覚化する工夫がみられる。  2013年版では単に顛末の説明としてある取締役会での解任シーンが、こちらでは窓外の土砂降りの雨が強烈な視覚イメージとして 残るといった具合に、実録性よりも印象的な画作りに優位を置くスタンスも窺がえる。  ラスト、舞台袖に立つ娘と主人公の切返しショットがなかなか良い。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2016-03-01 23:50:29)
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