41. パッセンジャー(2016)
《ネタバレ》 「青い珊瑚礁」的な、極限状態に男女二人だけだよサァどうするという設定に、「アルマゲドン」的な、死を持って愛するものとその他大勢を救うぜそんなオレどうよというエピソードを盛り込んで、両者を足して2で割ろうとしたら、割りかたがヘタクソでバラバラに砕けて支離滅裂になりましたというのが今作。 他のレビュアーさんたちの多くが語っているように、ジムは嫌がるオーロラをむりやり冬眠装置に押し込んでフタをしめてスイッチオンすべきでしたね。 それが「アルマゲドン」のブルースウィリスとベンアフレックの例の場面と丸かぶりになろうとねw でもまぁそもそも。 私だったら、故障で自分だけ起こされちゃったら、乗客は非常識になるので起こさないとしても、少なくともクルーは会社側の人間の責任者として全員たたき起こすw そう思ってしまうと、それだったら映画が成り立たないって百も承知だけど、やっぱり見ながら感情移入は困難きわまりないですよ。 火がボーボーうずまいているシチュエーションで「クルーを起こしたほうがいいんじゃない?」と言うオーロラの意見をジムは却下するけれど、いやほんと、この状況でクルー起こさないとか、ちょっと何言ってるのかよくわかんない。 SFとラブストーリーを絡めた作品といえば「ガタカ」と「ミッション:8ミニッツ」「12モンキーズ」あたりが傑作だと評価している私だが、このSF映画における二人の恋愛劇はほんとにお粗末で、どうしようもない。 ヒロインをオーロラという名前にして、決死のミッション(←イヤミです)で永遠の眠りについたジムを蘇生させ ”逆・眠れる森の美女” というオサムいジョークをやってみたかっただけのために2時間近い尺を使ってこの映画を作ったのだとしたら、高いカネだけふんだくっといて故障するような船体を宇宙に飛ばした企業と同じくらい悪質ではなかろうか。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2020-09-01 14:48:57)(笑:1票) (良:1票) |
42. 三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船
気に入っている。ひたすら気に入っている。もうDVDで何度観たことか。何度観ても何度でも観たくなる映画。 「バイオハザード」で見慣れたミラのアクションも、豪華ドレスと古典的なシチュエーションで行うと、また違うテイストで見惚れてしまう。 「ジャンヌダルク」の薄汚れたミラも良かったけど、今作のように華麗なファッションショーのごとくドレスをあれやこれやとお色直しを繰り返すミラもまた見惚れてしまう。 とぼけた表情でよく動く目玉を駆使したおちゃめな演技もミラのオハコ。魅力いっぱいのミレディに仕上がった。 そして枢機卿のクリストフ・ヴァルツは安定の悪役。 さらにはオーランド・ブルームもまた、オシャレと女と権力が大好きという最低男を見事に体現していたし、タイツ姿と左耳にプラプラさがるイヤリングもまたチャーミングだ。 三銃士はそこまで超メジャーな俳優を使わないことで、ミラvsヴァルツvsオーリーの3人の悪役の駆け引きのほうが引き立ち、そう、つまりこの映画は”三銃士”と題したものでありながら、ミレディらの”三悪党”の心理戦を楽しむ作品なのだ。 頭がトロくてウブだけど王妃とファッションは大好きなフランス国王と、当事の肖像画から抜け出てきたような古典的な顔の王妃のキャスティングも100%カッチリきまった。 ファッションに関する王とヴァルツやオーリーとの洒脱なセリフまわしといい、ミレディの想定外の動きといい、常に笑わせ、ドキドキさせてくれる、素晴らしい構成の映画だ。 重厚で理づめが過ぎては観るのが疲れる三銃士を主題にした作品でありながら、とことん見やすいライトな映画を撮るのを得意とする(裏を返せばアカデミー賞狙えるような重みのある作品は作れないとも言えるが)監督のポールの味付けで、ムダな背景説明などカっとばし、ひたすら面白くて見やすいポップなエンターテイメント作品に昇華されている。 ノートルダム寺院ファン(なんじゃそら)な私にとっては、空とぶ飛行帆船がノートルダムの一番高い塔のさきっちょにブスっと突き刺さって終わったときは、思わずフフフッっと笑ってしまった。 あの塔のさきっちょはディズニー映画「ノートルダムの鐘」で、カジモドがよじ登ってパリをグルっと見下ろした名場面でも使われた塔で、あの塔はきっと外国の映画製作者たちに「あの塔で何かおもしろい絵を作りたい!」と思わせる何かがあるに違いない。 そして、ミラが首飾りを奪うために進入するときに見せたムッチリした太もも露出は、夫であるポールの嫁自慢に違いない。 [DVD(字幕)] 10点(2020-09-01 14:01:40)(良:1票) |
43. パディントン2
《ネタバレ》 パディントンが飛び出す絵本を広げ、空想する場面。 絵本の中にルーシーおばさんと入り歩く場面は、ページをめくるたびにロンドンの名所と二人が現れ、途切れずに続く長回しで描かれており思わず息を呑む。 彼の刑務所での空想場面もだ。 ブラウン一家が面会時間を逃した時に、彼は「自分は忘れ去られた」と部屋で1人涙をこぼす。その涙が床に落ち、そこから双葉の芽が1本出てきたと思ったら、一気に草木が部屋を覆いジャングルになったかと思ったら彼方にルーシーおばさんが。彼は思わず抱きつき心の内をこぼす。 これもまた空想シーンの名場面である。 あまりに空想シーンのデキが良いので、同じマズい料理ばかり作るコックに辟易している囚人達の食堂の場面もそうだと思っていた。 パディントンが「皆の為に違うメニューを!」と提案した所からの、スイーツばかりの新メニューがずらりと並べられ(料理がなくスイーツだけという、さりげないボケ)どこかの小粋なレストランよろしくテーブルからイスまでリニューアルする食堂の場面も「空想か?」と思った、が、どうもこれがリアルにそうなっているようで、映画全体に満ちた(いい意味での)そういう壮大な熊ボケが 「あ、パディントンでは、そういう事になりますんでヨロシク」 みたいな、制作側の確固たる意志を感じさせ、もうこちらとしては 「はっ、わかりました。」となる。 最後には収容所の悪役ブキャナンが夢だったミュージカルを他の囚人達も参加してやっていて、こういった類のムチャな流れも普通の映画なら「登場人物の空想」として描かれ「だからアリです」となるが、パディントではそれがリアルに起こっている事象になっていて、そして制作側の「パディントンなので、アリです」という意志をヒシヒシと感じる。 ところで、ヒューグラントは”かつて人気があったが今は落ち目の俳優”役。 彼がインタビューで「監督に『この脚本は君をイメージして作ったから是非出てくれ』と言われてへこんだよ笑」と苦笑いしていて、実際90年代の大活躍以降パッタリと話題作に恵まれない彼にとって、この役を全力で演じきる事はプライドとの戦いだっただろう。 そう思うと、彼が随所で見せる全力の自虐ネタに、若い頃の彼が好きだった私は、いちいち激しく反応してしまった。(つまり、大笑いしてしまった) 多くの人の彼のイメージは”90年代に席巻したラブコメ俳優”では? でも私にとっては中学時代、母に連行されて鑑賞した「モーリス」でホモ役を演じた男として、思春期の私にかなりのインパクトを残した俳優なのだ。 そんな私ゆえ、”過去の栄光”にすがるナルっぷりを表す、自宅のあちこちに飾られていた若い頃の写真の中に、「モーリス」でのスノッブなヒゲ顔写真が額装して壁にかかっていたのも見逃さなかった(笑) しかしだ。 やはり見終わって感じるのは「正直に、親切に生きていれば、幸せになれる」という当たり前の教え。 正直で親切であっても、報われなかったり失敗する事もある。だから人は「ならしなくていい」となりがち。 ルーシーおばさんに絵本を贈り、ロンドンに来た気分にさせてあげたいという夢の為に、失敗しながらも、効率が悪くても、お金を貯めようとしたパディントンと、オファーがないなら自主上演をと夢見て、その資金にお宝を盗もうと画策するブキャナン。どちらが幸せになるかは分かりきったラストシーンにつながるが、当たり前の展開なのにやっぱり泣いてしまう。真理には敵わない。 この主題を「道徳心のおしつけ」と受け取るのは違うだろう。 昨今増加の虐待親。でもその遠因はその親を育てた親が養育過程で愛情不足にさせてきたから。 虐待親の親が自分中心で生き、子を二の次にした結果、その子は自分も他人も、そして自分の子も愛せない親になってしまう。 だからロンドン大好きでロンドンに行く気まんまんだったルーシーが、パディントンを拾ってすぐ「この子のために、ロンドン行きはナシ」と決断したエピソードは、それだけで 「そう、子育ては自己犠牲。でもそうやって自己犠牲をいとわず愛情を子に注げば、その子は必ずその愛に応えて倍返ししてくれる」 と納得させられる。 実際パディントンは良い子に育ち幸せな日々を送って、そしてルーシーは夢のロンドンに招待された。 ルーシーおばさんは自己犠牲だけで終わらず、お互いwin-winとなったのだ。 「パディントン2」は、映像美あり、笑いと涙あり、伏線回収もばっちりで子供も楽しめるが、大人たちも、自らの生き方をみつめるきっかけにもなる、素敵なエンターテイメント。 [映画館(吹替)] 10点(2020-08-29 22:58:30)(良:1票) |
44. オデッセイ(2015)
《ネタバレ》 SF大好物な私であるが、「オデッセイ」に関しては、ズバリ、私とは相性が悪い。この主人公の、取り残されたことが分かったときの落ち着きっぷりが、どうしようもないのである。 宇宙飛行士たるもの、いかなる非常事態にも冷静さを保てる強靭なハートを持つものであることは重々承知。 NASAの宇宙飛行士の訓練の9割が非常事態に対応する訓練だということも承知。 だが、何が起きても数秒間だけオーマイガッなポーズをとってみせた後からのただちに解決策をシュクシュクと行う場面も、何度も繰り返されるばかりでは、ワンパターンで単調なのである。 火星で穴があいた宇宙服のヘルメットの前面をガムテをペタっとはるだけで修理完了!とか 吹っ飛んだ小屋(アレは何という名前でしたっけ)も巨大なビニールシートをガムテをペタっとはるだけで修理完了!とか 「火星ってそんなにガムテだけで生きていける場所なのだろうか?」と、そのあたりのイージー感も没入感がそがれた理由だ。 宇宙に一人取り残されるというテーマでは「月に囚われた男」が傑作なのだが、主人公は企業の社員であって、宇宙飛行士ほどの訓練は受けていないしメンタルも弱いという相違点はあれ、「オデッセイ」と比べたら”ひとりだけ取り残されたもののココロ”がヒリヒリするほど伝わってくる。 (地球との交信もリアルタイムではなかったり、そもそも地球に帰還させてもらえる前提すらないところも、ヒリヒリポイントだ。) ならば「オデッセイ」はサバイバルに徹した作品として優良かといえば、よくよく考えれば、帰還計画についてはNASAの陣営のほうが尽力しているところが多く、実際NASA関係者がアーダコーダと話し合っている場面が、ダラダラするくらい長い。 「主人公が全然出てこないよ!」っていう場面が長すぎて、これはNASAのキャラが主人公なのではと思うくらいである。 かといって、たとえば「アルマゲドン」に登場するNASA陣営のビリーボブ・ソートンのような、個性がきわだつキャラがいるかといえば、まったく没個性の、上司&部下の”イカニモ”な顔ぶれがワラワラ出てきてアーダコーダと三流の企業ドラマのごとき帰還計画のやりとりをしているだけなのであるから、褒めようがない。 唯一心が揺さぶられたのは、マットディモンが前半ではムキムキマッチョの肉体だったのが、後半のシャワールームから出てきた場面ではゲッソリやせほそった体になっていたという、体重の増減も自由自在な役者根性のみ。 ところでコレを書きながら今ふとすごいことに気づいちゃったのだが、SF映画において、宇宙空間で主人公のサバイバルを描く場合、その主人公は、「オデッセイ」のように宇宙飛行士のようなプロではダメなのかもしれない。 思い起こせば、「アルマゲドン」は、ただの掘削屋だった。 「月に囚われた男」は、ただの社員だった。 あの「ゼログラビティ」は、ただの博士だった。 宇宙における危機トラブルに関する豊富な知識や経験を持ち合わせていないセミプロが主人公だからこそ、何かあったときの、取り乱し方も、それを乗り越えて、解決したときの鑑賞者の感動も、ひとしおなのだ。 いずれにしても作品としてのデキがよろしくなかった「オデッセイ」の中でも一番ワケがわからなかったのは、イモの水をあげるために爆発事故起こしてまで苦労して手作りの水発生装置を使って水を作っていたのに、後半あたりでシャワールームから”水”で洗いたての濡れた頭をフツーにタオルでゴシゴシしながら出てきた場面。 だったら最初から風呂場から水もってこいよ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-08-29 22:46:24)(良:1票) |
45. 死霊のはらわた(2013)
《ネタバレ》 オリジナルより好きですよ。「死霊のはらわた、オリジナルがいい?リメイクがいい?」というのは永遠に意見が分かれ続けるテーマですね。 オリジナルのほうが疾走感あるという意見も多いわけですが、私からすれば、”森に、窓の外に、ケムリもくもく・・・月に白いモヤがモコモコ・・・”って、こっちがモヤモヤしてきてしまう場面ばっかりで、もうだるいのなんのって、1,5倍速でなんとか見れたという感じでした。 対してリメイク版は、1,5倍だと早すぎて画面見づらいと思うくらい各場面の緊張感や疾走感はすごかったです。いろいろなホラー映画の要素をミックスしている感はあるものの、スタイリッシュにまとめあげているので、有能なDJがヒット曲をノンストップリミックスしたCDのような感じで、けして否定的には感じません。 薬物治療で森にこもるという設定も、薬物依存の子が最初に悪魔にとりつかれても、仲間達は「禁断症状だから仕方ない」と、深刻に受け止めず放置して状況を悪化させるというナチュラルな展開にするうえで、なかなか上手い設定で。 本の呪文を紙でこすって浮き上がらせつつ、わざわざ声に出して唱えちゃう彼はIQがかなり低いわけすが、いやいやそれをいうならオリジナル版でテープレコーダーに呪文を録音した人も「これから呪文を読むがこれをこのまま再生すればヤバイことが起きるので避けたい場合はここでストップしてください。では読みます・・・ウンタラカンタラー」と録音すればいいのに、再生する人のことも考えずいきなり呪文朗読突入~!!!ってのも相当IQ低いですよ。 (それはもう、みんなのシネマレビューで、ネタバレマークがないのに、ネタバレ感想文読まされたくらいの痛手ですよ。) ホラーに笑いも求めるひとはオリジナル、シビアなゴア表現のみを求めるひとはリメイクをお勧めします。まぁ、いうほど私、オリジナルで笑った覚えはないんですけどネ。(オリジナルの”煙”場面の多さに、あきれ笑いはしたけど) [DVD(字幕)] 9点(2020-08-29 22:41:47)(良:1票) |
46. ミッドナイト・イン・パリ
《ネタバレ》 未来が不安になるような気の合わないフィアンセ、過去の世界に生きたがってついていきにくい美女、旅先で出逢った今を生きながら一緒に楽しめそうな骨董屋の娘。 この選択肢で”正しく”、”現実的な”選択肢である骨董屋の娘を選んでいただき誠にありがとうございます的なキモチのいいオチ。 「婚約者とこのまま結婚していいものだろうか?」と迷う主人公の心の動きを描いた作品は数多くある。 そんな中で、珍妙なタイムスリップ要素を入れた本作は、なかなか異色の名作だと思う。 ついでに「芸術好きな人じゃないと楽しめない」との意見が多い中、ごめんなさい、芸術好きなのでそこも楽しんでしまいました…。 (逆に私、スポーツ好きじゃないのでスポーツが出てくる映画は楽しめないんです。だから許して笑) 作家群はいまいち知りませんが、画家群は全員性格も分かってたので、登場するたびに面白かった。 ピカソ、ダリ、ゴーギャン、ロートレック… 特にゴーギャンがマリオンを秒で口説いてたあたりは、彼が妻子をほっぽってタヒチに移住し、現地の13歳やら14歳の女子をかたっぱしから現地妻にしてたり、持参したポルノ写真を展示して”ゴーギャンの秘宝館”を作った絶倫エロおやじであることを知っている者としては、ウケる部分が大きかった。 あとタイムスリップするにあたって、本人が行きたい時代に行けちゃう都合のいいシステムもいいですね。 ギルが行きたかった時代にいたマリオンは、ベルエポックの時代に行きたがっていて、そうしたら馬車がやってきてベルエポックの時代へ…って笑 となると、ギルを尾行していた探偵がフランス王朝時代に行っちゃったってことは、あの地味な探偵は煌びやかなフランス王朝時代に憧れてたんだと思うとウケる笑 …といろいろ言いながらも、じゃぁまた見たいですかと言われたら別に見なくてもいいや程度なので5点となります。あしからず。 ムード重視のファンタジー・ラブストーリー映画。 [DVD(字幕)] 5点(2020-08-29 17:53:30)(良:2票) |
47. リミットレス
《ネタバレ》 主人公の男が、薬を元嫁の弟の家から大量にかっさらっていったら、まず最初に 「この在庫がなくなったらもう入手先はない。ずっと常用したいから、どうしたら増やせるか?」って考えるべきだと思う。 頭が冴え渡ってない私でもすぐそう考えるのに、なぜそこに思いが至らず、デニーロとの重要な会合の時にお薬ケチって飲まなくてドジふんだり、チンピラに「薬よこせやい」って言われた時に薬がなくてされるがままにメタメタにされてるのか、シラケてしまう場面が多い。 その最たるものは、常に持ち歩けるように特注スーツに、隠しポケットを作れって頼んだのに、全然隠しポケットじゃなくて普通の内ポケットになってるところ。 そりゃ、そんな分かりやすい普通の内ポケットの位置になってたら、薬持ってかれるに決まってますやん笑 普通隠しポケットっていったら、襟をぺろっとめくった襟の内側(背中側)とかにしますがな。 そんなこんなで、話を展開させるために、”おマヌケ場面”がたびたび登場するのが、ちょっと…っていう映画。 テンポはいいので最後まで見きれたけれど、また見たいかといえば、そこまで中毒性のない内容ですね。 [DVD(字幕)] 4点(2020-08-28 17:19:23) |
48. ドント・ブリーズ
《ネタバレ》 主人公とおじいちゃんとの攻防の流れは、いたってありきたり。 あともうちょっとのところで、おじいちゃんに捕まってアアアアア・・・とかもう見飽きる。 最初の1名はけっこう早めに死んだけど、残り2名とおじいちゃんはストーリーをひっぱるためにほぼ不死身という設定もなんかキツイ。殺されたと思っても「ま、どーせまた起き上がるんだろ」ってなる。 これじゃまるでゲーム版「バイオハザード7」のジャックおじさん。(分かる人だけ分かる) 屋外に出るのに、いちいちカギでどうにかしようとしないで窓ぶちやぶって出ろやとか、突っ込みどころがテンコモリなのだけど、その中でも特に、おじいちゃんが、赤ちゃん産ませたら開放するとか言ってるけど、あんなボロ家で盲目の1人暮らしでいつクタバってもおかしくないキチガイジジイがどうやって1人で子供育てるんだ? シンプルに謎。 殺戮シーンもぜんぜん怖くないからホラーって感じでもないし。 サムライミが製作してても、ハズレはあるんですね。 [インターネット(字幕)] 1点(2020-08-24 22:02:46) |
49. ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ
《ネタバレ》 デルトロの父性が出まくりだと感じる作品。 イサベルを輸送中(まだ偽装工作計画の中止になる前)に、後部座席でイサベルの顔を見つめながらわずかな微笑を浮かべたデルトロの目が、父が娘を見るそれであったことは見逃せない。 ラストシーンは、デルトロがミゲル相手に何やらお説教タイムが始まりそうなムードで終わったが、それも父として 「コメカミじゃなくてホッペタ狙って本気で人間を殺せないお前は、暗殺者にはなれないし、根っからのワルになれないお前は、もう組織から足を洗ったらどうなんだ?」 と息子を諭す父親の醸し出すムードそのものだ。 父が思春期の子供たちとせめぎ合うボーダーライン。そんな映画。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-07-24 15:35:49) |
50. ベイマックス
《ネタバレ》 ベイマックスが自分がこの世から消えるのを承知でヒロを生かすために身を滅ぼすシーンで、次女(小6)が号泣していたが、私はそれほどでもなかった。 ベイマックスって、かわいいが、しょせんロボットやんという冷めた心があったのかも。 ベイマックスのする事なすことはすべて、ヒロの兄がディスクに書き込んだプログラムによる作動でしかないし、優しさやスキンシップも大切なひとを失った人のケアの仕方をパソコン経由で自主バージョンアップしたり、つまり、ヒロにみせるすべての言動は、ベイマックスの感情ではなく”感情風”なのだと思うと「面白~い」とはおもえても「泣けるぅぅぅ」とまではいかない。 あと日本語ではベイマックスはケアした後に「あなたは大丈夫ですか?」と聞くのだけど(そしてケアした相手が「大丈夫だよ」と言うとミッションコンプリートになって充電用ケースに戻るのだけど)英語で視聴すると、ベイマックスは「Are you satisfied?(あなたは満足しましたか?」って聞き、ヒロが「I'm satisfied」と言うとミッションコンプリートとなる。 私の場合、その”満足”っていうワードが、CMでよくある「顧客満足度ナンバー1!」みたいな、サービス業者みたいな感じで、どうも安っぽく、企業的なノリのベイマックスに感情移入することに違和感があったのもあるだろう。 使用後のご感想は1から10で言うとどれに該当しますか? アンケートのご協力ありがとうございます。 今後の顧客サービス向上のためこのデータを利用させていただきます。的な。 ベイマックスはいったん滅ぶものの最後の場面では、ヒロを救うために放った自分の”ロボ手”にハードディスクを握らせてあって、ヒロがベイマックスの外側を作り直して、そのハードディスクを入れて、はいベイマックス復活♪みたいになっちゃったのも、少ししらける。 「ローマの休日」のアン王女と新聞記者が、最後はそのまま駆け落ちして二人の愛をまっとうしちゃったみたいなストーリーを見せられたような気分だ。 ピクサーは、「インサイド・ヘッド」でリンボンを、命を賭して友を救うという泣けるキャラを投入する勇気があるのだから、ベイマックスを復活させないという筋書きの選択肢は不可能ではなかったと思う。 リンボンはサブキャラだから消してもいいけど、ベイマックスはメインキャラだから消せないという判断だったのだろうが、結果としては私は復活前提で消えたベイマックスでは泣けず、二度と戻れないのを覚悟で消えたリンボンは毎度見るたびに号泣、である。 それに「リメンバーミー」でもほら。。。(ネタバレになるので自重) ベイマックスはベイマックスが主人公のようでいて、実際の原語タイトルは「Big Hero 6」なのだから、あくまでもベイマックスは主人公ヒロの相棒であって、どうしても途中で抹殺しちゃいけないキャラではないはず。 命は1回きりだからこそ、身を滅ぼして誰かを救うことに価値があり、人を感動させるものではないだろうか? そして、あれだけ泣いた次女だが、見終わったら 「でもヒロたちは仮面男をやっつけるのにあんな面倒なパワースーツとかベイマックスのバージョンアップするより、マイクロボットを倍の数作って対抗すればよかったじゃんね?」と、これまた冷めたことを言っていた。 私としては、キャラハンの娘を危険にさらし、キャラハン教授を鬼に変え、ヒロの兄が巻き添え爆死する状況を作った、そのそもそもの大凶源クレイが、結局そんな大打撃受けないまま終了しているところに”これでいいのか”感がいっぱいである。 とはいえ、全体としては無難にまとめたダイナミックな映像。 結局ディズニーピクサーはどんな話でもこういうアクション的要素はどこかにすべりこませてくるので、チカラワザで7点をつけさせられた感はいなめないが。 最後に。ゴーゴー・トマゴという名前が「キルビル」のゴーゴー・ユウバリを彷彿させたのだが、英語圏ではゴーゴー・ナントカっていう名前がけっこうあるのだろうか? [DVD(吹替)] 7点(2020-07-21 20:23:32)(良:2票) |
51. アリス・イン・ワンダーランド
《ネタバレ》 まぁもともとアリスの原作も、ナンセンスで意味不明なわけなので、この映画の中身も意味不明で構いません。 ヘレナ・ボナム=カーター、若い頃に「眺めのいい部屋」のお嬢様役とか「十二夜」のお姫様役をやっていた当時の姿が私の彼女のデフォルトイメージなので、バートンと事実婚状態になってからはすっかりバートン色に毒々しく染められているなぁと、バートン映画に出ている彼女を見るたびに思う。 アカデミー賞でも美術賞と視覚効果賞を受賞しただけあって、この映画は中身ではなく、映像のユニークさを楽しむものだと思います。 赤の女王の顔にしてもそう。 [DVD(字幕)] 4点(2020-06-19 13:16:26) |
52. ダンケルク(2017)
《ネタバレ》 30万人の決死の脱出作戦。 でもいまいち心に迫るものがないのは、脱出に失敗して沈没したりして命を落とした人たちの描写がライト過ぎるから。 上空からとらえた、海上で転覆しつつある船の様子とか、すでに転覆した船の上で座り込んでる兵士とか、そういうライトな描写で”沈没被害”を描くことが多すぎるのだ。 実際に魚雷が当たって転覆していく様子も描かれたが、いまいち兵士たちの悲惨さが描き足りない。 空爆されてボーンって兵士が飛ばされでも、兵士の腕や足がバラバラになって飛んでくることはないし。 イギリスの民間船に乗ってたあの17歳の少年の頭からの出血も、オランダの船の中に潜んでいた兵士たちが船の外から銃撃された時の出血も、ほんのわずか。 会場で放り出されて船からもれた重油にまみれて、そこに戦闘機が墜落して体に火がついてタイヘンだぁ~っていう場面の迫力もいまいち。 顔が燃えてケロイドになって蕩けていくみたいなCGを使うこともないので、火の向こう側で「うわ~」って顔してる姿しか見えないから、リアリティがない。 それじゃぁ代わりに、登場人物に深みがあって、感情移入できるかといえば、それもない。 イギリス人の民間船を出したオジちゃんも、ずっと桟橋に立ちっぱなしのケネスおじさんも、存在感勝負ってかんじ。 思い出せるのは、2つだけ。 上空からとらえた広大な海。太陽の光で美しく光る海。 そして、蛾みたいな模様のイギリスの戦闘機。 ノーランにしては珍しく、ノンヒット・ノーランの作品。 [DVD(字幕)] 3点(2020-06-05 16:54:34)(良:1票) |
53. トレヴィの泉で二度目の恋を
《ネタバレ》 シャーリーマクレーンの、口のまわりのシワシワとか、もともとちっちゃかったオメメが、年を重ねてますますちっこくなってるとか、「甘い生活」の再現シーンで見せる、がっつり太くてでも枯れ木のようにシワシワで水分のない二の腕とか、とにかくもうシャーリーの姿が痛すぎて、そればかりに気がいってしまった。 おいらくの恋を描いた作品はいろいろあるが、男性については何歳になってもダンディ度が上がるだけであまり痛さを感じない。 実際のところ、アラ還俳優でいえば、ジョージクルーニーは17歳下の女性と結婚しちゃえるくらい魅力は衰えてないわけだし、ブルースウィリスは23歳年下、アレックボールドウィンは26歳年下、70歳前後の俳優でいえば、ハリソンフォードは23歳年下、リチャードギアは34歳年下の女性と結婚できるくらいイケ続けてる。(ギアなんて68歳で子供まで生まれるとかどういう肉体) しかし女についていえば、60を超えてしまえば、お年寄り同士の当人達がよければすべてヨシみたいな恋愛はもちろんあるだろうし否定はしないけど、やっぱりシャーリーおばあさんの水分の抜け切った枯れ木の二の腕や、スリットからのぞく枯れ木のような太い足を見て、寒気がゾワゾワしないではいられない。 「ジュリエットからの手紙」という私が好きな映画でも、60超えのおばあさんの恋が描かれているが、こちらはフィジカルな面をいっさい前面に出していないため、とてもすがすがしく見られた。 しかしながらこの映画は、シャーリーの肉体やら、イチャイチャを、おりゃおりゃと画面上で見せられて、まるで水分が抜け切ったマドレーヌを皿に乗せて目の前に置かれ「さぁどうぞ」とニコニコされているような、とにかく”受け付けない感”が半端なかった。 シャーリーのかわいらしさは健在であることは認めるから、ここまで肉体をさらさないでも彼女の魅力を引き出せるいい台本が作れなかったのかなと思う。 あと、プラマーにとっては彼女が二度目の恋かもしれないが、シャーリーにとってはプラマーは二度目の恋じゃないことは間違いないと思う。日本語タイトルの不覚。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-06-01 00:06:53) |
54. ダイバージェント
《ネタバレ》 この作品には「高潔」がいるのに「博学」の暴走を批判するという描写はなく、「平和」がいるのに「博学」と「無欲」の争いを憂えるという描写もない。 5種類のケーキを買ってきたのに、3個だけ食べて2個冷蔵庫にしまったまま腐らせたというのと同じくらい、素材の料理方法がヘタくそです。 そして一番アウトだったのが、前半にたっぷり時間をさいて描く「勇敢」のスポ根ドラマ。 同期生との友情、ステキな先輩との淡い恋、厳しい訓練、鬼教官、ライバルのイジメ・・・。 そこのところは、まったくスキなく完璧に描ききっています。(スポ根に興味のない私なので、だるさが尋常ではありません。) そしてようやくスポ根攻めが終わったとホっとしたのも束の間、後半ではノンストップ”ツッコミ場面攻め”が襲ってきます。 まるでバレー部の鬼コーチが部員である私にレシーブ練習で”ツッコミ場面”という名のボールを次々容赦なく叩きつけてくるように。 そう、結局この映画は”退屈”なトレーニングを途中で投げ出さない忍耐力を鍛え抜いてくれる、ガチのスポ根映画だったのです。たぶんな。 [DVD(字幕)] 1点(2020-04-01 23:03:26)(笑:1票) |
55. 女と男の観覧車
《ネタバレ》 ヒロインの女性、元3流舞台女優という設定だが、そこがすごくウマイと思う。 芸術に関わる人間っていうのは、人間として魅力的だが、同時に”わがまま”で、”自己中心的”で、”感情的”で、そして、”倫理観に乏しい”。 でも、それが実は魅力でもある。 芸術家たちに破天荒なひとが多く、同時に異性のエピソードが多いのはそのせいだろう。 (ピカソとか、ゴーギャンとか、クリムトとか、・・・) ヒロインは、最初の結婚時に、不倫をして、夫を悲しませて子連れシングルマザーとなった。 釣りなんて興味なんてないのに、今の夫と結婚するために興味あるふりをして再婚した。 そのようなムリのある結婚がうまくいくわけもなく、彼女は海のライフセーバーの男が劇作家志望だと知って、あっというまに年下男に打ち解けて、将来の再婚相手とさえ妄想に走ってしまう。 夫への罪悪感なし。 ライフセーバーが夫の娘に気があるのを知ると、彼女に嫉妬の炎を燃え上がらせる。 彼との再婚を望む気持ちが前のめりになり、高価な誕生日プレゼントを渡して引かれてしまえば彼の前でブチギレる。 息子の放火グセを治そうとカウンセリングに通わせるが、そのお金は夫のお金を盗んで使う。 ライフセーバーとのデートの約束優先で、息子をひとりでカウンセリングへ行かせちゃって、息子は二の次に。 こうして整理してみれば、この映画の中でヒロインはどうしようもないほどのクズっぷりであるが、なんだろう、この女性像の悲壮感。 これだけダメダメ女房なのに、ケンカしたあとに自分から折れてやった夫は彼女に「今度釣り一緒いくか?」と声をかける。 彼女は、いろいろもがいてきたけど結局このパっとしない話しも合わない中年夫とうまくやっていくのが残された唯一の道なんだと悟って「YES」と答えるのかと思いきや、それでも「NO」とつきつけて、この映画は幕を閉じる。 「あぁ、こうして彼女はこの狭い土地の中で、これからもずっと、話しの合う若い男性と出会って不毛な関係を結んでは、また相手を失って偏頭痛とお酒とヒステリーを繰り返すんだな・・・」と、なんともいえない閉塞感。 でも、とても現実的な話で、彼女の家の前で来る日も来る日もグルグルと回る観覧車のように、こういう出会いと別れのパターンをグルグルと回り続ける無限ループに囚われもがき続ける人たちはこの世界にたくさんいるのだろう。(特に芸術家タイプ) だからからこそ、このような作品が生み出され、共感する人も多いのだと思う。 ウッディ・アレンのリアル恋愛劇は、いつもヒリヒリさせる。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2020-04-01 22:58:56)(良:1票) |
56. ジョジョ・ラビット
《ネタバレ》 これは見事なる子供のロマコメ映画。 恋をまだよくしらないジョジョと、彼の家にかくまわれた、彼氏がいる年上のユダヤ女。 ジョジョが「どこに住んでるか絵を描いて」といえば、彼女はジョジョの顔を描く。 「これ僕じゃん!」って言うと「そこに住んでるのよ」と応える彼女。 ふたりの未来を予言するかのように、たしかにジョジョの脳内にはユダヤ女が住み始めるのだ。 彼が彼女を好きになっていくプロセスは、彼女に偽の彼氏からの手紙を書いて、彼女に彼氏をあきらめさせようとしたり、ユダヤ狩の男が見つけたお絵かき帳に、彼氏が八つ裂きの刑(人間大砲の球にされたり)になっている絵が書かれているところから伝わってくる。 (おなかにチョウチョひらひらは、分かりやすすぎ笑) でも彼は、ユダヤがどう悪いのかいまいち分かってない。 とりあえず、ヒトラーがそういってるから、そうなんだ、くらいのレベル。 だって地下活動している母親が、身分を隠すために息子をヒトラーに心酔してる子にしたてあげてるだけなんだもの。 で、ジョジョの「彼女がユダヤじゃなければ隠さずに付き合えるのに・・・」というもどかしい思いは、ラストあたりで戦争終結したあとのセリフでよくわかる。 隠し扉のむこうで彼女が「どっちが勝ったの?と聞いて来た時に 「僕たちが勝った。ドイツだよ。」と答えたことで。 つまり、「彼女がドイツ人だったらいいのに」という願望だ。 とにかく、子供の脳内はシンプル。 「なんかいつも近くにいるこのねーちゃん好き。」 「彼氏がいるなら、あきらめて僕を好きになって!」 「ユダヤじゃなけえば、堂々とつきあえるのになぁ~」 そんなものである。 でも子供の恋なんでのはそもそもそんなものなので、これでOK。そして楽しく微笑ましい。 最後にドアの外に出た彼女が、彼をひっぱたいたとき 「あ、彼と一緒にパリにいくっていうのは、この家を出るためのうそだったか。」と一瞬思った。 実際そうかもしれない。 でも、そのあと「どうするのこれから?」と聞かれたあとに、彼女が体を「どうしよっかな~」と迷うように左右に動かす動作から次第に踊るようなかんじにあなるに従って 「まいった!」の一言、なんてキュートなエンディング。 母親のスカヨハが首吊りされたのは残念だったけれど、彼女が生きてたら戦後は、ユダヤ人の孤児をあずかってくれる家に連れていかれて、ふたりはもう逢えなくなっていたはず。 だからこそ、ふたりが手を取り合いパリへ行くといハッピーエンドを作るために、ふたりの恋愛成就のために、母は首吊りされなけえばならぬのであった。 首吊りされたのが顔を見ずとも観客も「母だ」と分かるあの靴。 あの靴で、どこかの階段の近くで母が語った、愛の偉大さ。 そして部屋で見せてくれた「愛のダンス」。それらが伏線となり、エンディングの二人の愛のダンスの感動が際立った。 ユダヤの血が入ったタイカ監督も、アホっぽいヒトラーを演じて、この映画でアカデミー賞脚色部門でオスカーをもらって、ヒトラーへの仕返しも充分果たせたといえよう。 [映画館(字幕)] 9点(2020-02-11 17:38:43) |
57. 女王陛下のお気に入り
《ネタバレ》 もともといるベテランを、野心に燃えるシタッパが、あの手この手で策をうってはいあがり、やがてベテランを追い抜く… たとえば「ショーガール」のような痛快な物語だと思っていた。 だが、アン王女が、モールバラとアビゲイルを自分をめぐって戦わせて「私ってモテルゥ~♪」と悦に入っている中盤以降は、重くてただただ暗い物語だった。 ツンデレのモールバラ。 無償の愛を注ぐかのようなアビゲイル。 月と太陽のような対比を見せるふたりも、分かりやすいキャラ設定。 最終的には誰も幸せにならない。 アビゲイルにハメられ、最終的に国外追放となるモールバラ。 モールバラを追い出したものの、彼女から歩み寄ってくれる手紙が来ることを心の中では待ちわび、しかしアビゲイルのせいで手紙が隠され、最終的には本当に愛し愛されていたモールバラの喪失感にさいなまれ続けるアン。 成り上がっていくにつれて心がすさみ、夫への愛もなく、女王への愛もなく、酒を飲まずにはいられなくなっていくアビゲイル。 最後の場面は、ひざまづいてアンの足をもまされるアビゲイルだが、執拗なほどの長い時間それを見せつけられて、ふたりの表情がイラマチオにしか見えず、ひどい嫌悪感に襲われた。 予告CMのイメージとは違う、ドロドロバッドエンド。 昼間は、外光だけで照らされた城内。 夜はロウソクのオレンジに照らされる部屋。 リアリズム漂う光の表現だけは目を引いたが。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-02-11 16:51:10) |
58. 君の名は。(2016)
《ネタバレ》 この映画のすごいところは、洋画や邦画関係なくタイムリープものに多い矛盾点、見事に覆いつくす映像と脚本である。 たとえば「アルマゲドン」なんて、重力が少ないはずの隕石の地上で普通にスタスタと歩いちゃってる。でもやっぱりブルースウィリスがスイッチをポチってするときは涙がグアーって流れちゃう。 「ガタカ」なんて、宇宙ロケットに入るのに宇宙服じゃなくてスーツとかどう考えてもオカシイダロと思う。でもあの映画ほど何度も見て引き込まれる映画はない。 それと同じように、「君の名は。」もまた、細かいところばかり重箱の隅をつつくようないやらしい見方をする人間でなければ、しっかり感動できる。そんな映画である。 ここで持論なのだが、SF映画には2種類あると思う。 ①「矛盾点が多少あっても、全体が総合的にすばらしく感動させられる良い映画」(たとえば「ミッション:8ミニッツ」もそう) ②「矛盾点が多少あって、全体もグダグダな話や映像なので、感動できない映画」(B級SFに多い) そして「君の名は。」は、①であることは間違いない。 補足だが、市原悦子演じる三葉のおばあちゃんが語る(彼女もまた三葉や瀧と同じように、入れ替わりができる能力をもつ血筋)”結び”のお話は、他のアニメ映画にはない深いものがあった。 (うわさによれば、たくさんの恋愛や人間関係を持ってきた30代以上がここでジ~ンとするとか) [映画館(邦画)] 10点(2019-10-15 17:56:19) |
59. サラの鍵
《ネタバレ》 非常に綿密に作り上げられた構成という印象。 ヒロインの夫が引っ越し先としてリフォームを始めた部屋を起点に、過去と現在がクロスオーバーする。 前半は、その部屋に住んでいたユダヤ人家族が、サラの誤ったはからいで弟を納戸に置き去りにしたまま連行され、収容所に送られ一家3人もバラバラになってしまった末に、逃避行の果てサラが置き去りにしてしまった弟を助け出すためにまいもどったその部屋で弟が腐敗した姿で死んでいるのを目撃する・・・という物語。 後半は、サラのその後を、ヒロインの夫の父、サラの育ての親夫婦、サラの夫の再婚相手とその娘、サラの息子・・・といった関係者の言葉をパズルのピースを繋ぎ合わせていくように、描いていく。 (ヒロインはいってみれば、サラのストーリーを語る”語りべ”である。) サラ役の少女の演技力、さらに育ての親夫婦の演技力もすばらしく、弟発見時の彼らの演技があまりにもリアルでその現場にいるように感じ、一瞬で涙が滝のように流れた。 そういえばこの育ての親の父は、どこかで見たような・・・と思ったのだが「戦火の馬」で孫娘を育てていたフランスのおじいちゃん役を演じていた人であった。 あの作品でも慈愛に満ちた目の表情がとても印象的だったが、「サラの鍵」でも、サラの成長を見守り、育ての親のもとを去る姿も追わずに送り出すその姿に静かに心打たれた。 ラストシーンのNYのレストランで、ヒロインとサラの息子が再会したとき、彼女の生まれてまもない娘の名前がサラであることが明かされるが 画面にうつしだされた、後姿で無邪気にレストランの窓にはりついて外を見ているそのサラおじょうちゃんは、髪の毛が輝くようにしっとりとした金髪であった。 ヒロインもその夫もブラウンの髪であるのに、その娘が金髪・・・というのは、遺伝としては可能性はあるそうなのだが、この映画においては、あえて両親と異なる金髪にすることで、「この子はサラの生まれ変わりかもしれない」と鑑賞者に思わせようとしたのではないだろうか。 冒頭から悲惨な場面が続き、サラは自らの罪悪感と幼い頃に家族を失った孤独感から逃れることなく自殺してしまったというサラの人生の顛末が語られた作品だが、この最後の場面でヒロインの娘がサラの生まれ変わりだと受け取ることで、「このサラはヒロインの愛情を受け、幸せな人生をまっとうできるといいね」という、平穏で温かいエンディングを作ることに成功していると思う。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2019-02-19 14:25:12) |
60. パーフェクト・センス
《ネタバレ》 視覚を失ったらどうなるかが描かれないまま終わることを、なぜこうも批判されなくてはならないのか??まったく理解できない。 劇中の人々は感覚機能を失うごとに、残された感覚器官を洗練させ、想像力を豊かにし、状況を立て直す努力をしてきた。そのように、我々も残された触覚をもって人々はどうなっていくか?をより想像力をとぎすませて、考える楽しみを味あわないでどうするのか? 私はこの映画を見て、ヘレン・ケラーを思い出した。視覚と聴力という重要な機能を失っていた彼女は、しゃべることもできずにいたが、サリバン先生の誠実で根気強い指導によって、”指文字”で対話ができるようになったという。 劇中で病気にかかった人々には、まだ触覚が残されている。ここでネガティブ思考の観客は「あーこの後にいよいよ触覚も失われて、完全に人々は孤立して死んでいくしかないんだな」と思うだろう。 しかしポジティブ思考な観客ならば 「触覚でお互いの特徴を感じながら、相手を特定したり、なんとかやっていこうとするのではないか?」 「罹患していない人々のネットワークが出来てきて、罹患した人々を助けるシステムがいずれ構築されるのではないか?」 「劇中でロシアに病気にかかっておらう抗体を作れる可能性がある人がいたという伏線があったので、彼らから抗体が作られて、いずれ病は治まるのではないか?」 と思うだろう。そして 「大切なもの一度失うことで、当り前に思えたものの大切さを感じられる人々が増え、お互いにもっと優しくしあえる世界になるかもしれない」 なんてワールドワイドにラブ&ピースみたいな壮大なイメージを描くこともできるだろう。 最後に残された触角だけは失われないと私は思っている。なぜなら、人々が感覚機能を失う直前に、さまざまな感情の爆発が起きるが、その感情の種類”喜怒哀楽”すべてをもう済ませたから。 触覚を失うとして、その直前にどんな感情の爆発を起こすのだろう?と思えば、答えが見つからない。だから、触覚はそのまま人間に残されるのだと思う。「シンデレラ」で、12時過ぎたら全部魔法がとけるのに、なぜか未来の”希望”となるガラスの靴だけは魔法がとけずに残されたように。 劇中で人々は何があっても希望を捨てなかったように、シンプルでベタなメッセージではあるが、この映画のテーマは”希望”。そう結論づけられるかもしれない。 そして、エバ・グリーンはあんなにギスギスに痩せてるのに、おっぱいだけはボリューミーな美乳だなんて女の私から見てほんとにズルい、とも結論づけられるかもしれない。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-02-12 18:40:42) |