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K&Kさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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81.  ゴッドファーザー PART Ⅱ 《ネタバレ》 
実は過去に1-2を通したもの(恐らくゴッドファーザー・サガ)をテレビ録画して見る機会があったんだけど、「これは最初に観るものではない、1、2それぞれを観ないと勿体ない」と兄にアドバイスを受け、素直に従ったために今回が初見となった。 本作はマイケルの現代パートと、父ヴィトーの過去パートが交互に出てくる。 ドン・チッチオに家族を殺されたヴィトー。ニューヨークでギャングのファヌッチを殺し、イタリア系移民の後ろ盾となり、確固たる地盤を築いた上でチッチオに復習するまでを描いている。どん底の独り身から家族と仲間を作り、表向きはオリーブ会社のマフィア・ファミリーを作るまでの成長物語として、とても前向きな作りとして描かれている。ペチペチとパンチするソニーが可愛い。 一方マイケル・パートでは、いきなり寝室で襲われ、兄のフレドが内通者だと知り、妻ケイは自分の子を自ら堕胎する。家族のためにカタギからマフィアの世界に身を置いたのに、バラバラになっていく家族。ケイに見せたマイケルの悲しみと絶望と怒りの表情が物凄い。 母が死んだら兄フレドを殺すことを決め、ケイとは離婚する。家族に恐怖しか与えられない孤独なマイケル。 母の葬儀でのコニーの告白。自分を傷つけることがマイケルへの仕返しだったこと。家族を守るためだったことを理解し、マイケルを許すこと。そしてフレドを許してほしいこと。 コニーの告白と説得で、マイケルはフレドを許したんだと解釈している。(※ウィキだと違うみたいなので、いつもの妄想ということで) だけど唯一信頼できる家族と思ったコニーが、裏でケイを手引していたことで、マイケルはフレド殺害を決意したんだろう。 フレドと釣りに行くアンソニーを「お父さんと出掛ける」と連れ戻す役をコニーにさせた。当然出掛けないマイケル。 フレドの最後の祈りは、自分が死ぬことをわかっての祈りだろう。釣りのおまじないは“誰にも秘密”だから。 湖畔を見つめるマイケル。ファミリーのためを想い、家族を失ったマイケル。結婚指輪をしたまま。 家族みんな揃っての父ヴィトーの誕生会の回想。コニーとカルロが初めて会う。  そして枯れきったマイケルの思い出として、ゴッドファーザーパートⅠの、コニーとカルロの結婚式にループする。 あぁ『サガ』から観てはいけないのは、そういうことかと、あれから30年近く経って理解した。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-02-13 17:07:55)
82.  ゴッドファーザー 《ネタバレ》 
高校に入りレンタルビデオで借りたが、テープが古くワカメになっていて見られなかった。古い映画でそれ一本しか在庫がなく、返金は受けたけど、見るのは諦めた。そんな過去があり、今回が初見。 ~The Godfather~名付け親とか後見人って意味もあるようだ。 偉大なるゴッドファーザー、ドン・コルレオーネがずっと主人公かと思いきや、割と早くにマイケルの物語になる。カタギの生活をしていたチャラくて大人しそうなマイケルが、自分の意思でファミリーの為、ビジネスの為に手を汚していく様が壮絶。 病院の入口でパン屋と見張りのフリをする。ガクブルのパン屋だけでなく、マイケルも怖かっただろう。そんな、一般人感覚のマイケルが、知恵と勇気でマフィア界で生きていく物語かと思いきや、それもちょっと違う。 シチリア島から帰ってからのマイケルの目が凄い。ヴィトーの、厳しくも慈愛が感じられる表情と違い、冗談や言い訳なんて通じっこない冷たい表情、心の裏側まで見られてるような、感情を感じさせない渇いた目。コニーの結婚式で軍服を着ていた時と全然別人のようだ。 殺しの相手は取引先、ミスをした身内、裏切った身内…見知った人を殺す決断をするというのは、どういう気分なんだろうか。突然殺される身内の驚いた表情。これから殺されるのが解ったテシオの「昔のよしみだ、見逃してくれないか?」何とも切ない。そんな世界。 コニーにカルロの事を問い詰められ、ケイからは本当はどうなのか尋ねられるマイケル。ドン・コルレオーネは表情を崩すことなく「ノー」と言う。嘘だってわかるけど、ホッとするケイ。あの空気から開放されてこっちまでホッとした。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-01-29 14:47:10)(良:1票)
83.  機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編 《ネタバレ》 
初見は劇場公開時、人生初の単独上映観賞作品。 新規作画多数。新設定でナンバリングされたガンキャノンが2機に。ギレンに美人秘書が、ララアの軍服、セイラの入浴シーンと見どころが多い本作。 オープニングのキャメル艦隊戦、スクランブル発進の慌しさに対し静かな音楽、やけに落ち着いたアムロと鳥肌モノの演出が映える。 ただ、初期の第2次世界大戦みたいな世界観から、ニュータイプが連呼されてオカルトっぽさが増してきたのと、登場人物がほとんど軍属で、戦場が舞台になっているので、サイド6編はあるけど、一般人目線での楽しみは少なく思う。 “白い奴”。敵が恐れる程の怪物となったアムロは、行方不明だった父と再会するが、父は自分や母への関心をすっかり失っていた。 守るべき人も故郷もなく、ようやく出来た愛する人を殺してしまったアムロは、自分の能力を戦争を終わらせるため、ザビ家を倒すために使うことにする。 一方ララアを失い、アムロにも勝てなかったシャアにとって、キシリアを殺すことは目的ではなくなっていた。ザビ家を倒すことよりニュータイプの未来を見てみたいというのはシャアの本音だったと思う。 若者が社会で突出した能力を発揮すると、自分よりちょっと劣るが有能だった先輩に、突然ヤキを入れられることがある。最後にシャアがアムロに挑んだ白兵戦がそれかもしれない。『究極のセールスマンは、落ちている石ころすらも売れる』と言うが、言い換えると『商品・売り物に依存しない』と言う意味らしい。ガンダムの操縦能力だけがアムロの考える自分の存在理由だったから、それを使って世の中の為に戦争を終わらせ、ララアのもとに行く。まるで社会人が、退職後のハワイ旅行だけを楽しみに休みも取らず会社のために命を削るようなもの。戦争の元凶が滅び、アムロは父の作ったガンダムを捨て、母に会いに行ったコア・ファイターすらも捨てて、生きて帰るべき所、自分にとって本当に大事なものを見付けられたエンディング。『ビギニング』そして『めぐりあい』と、挿入歌のタイミングも神がかっている。  アムロの脱出を誘導するカツ・レツ・キッカ。戦場で能力に目覚めたという解釈が一般的だろうか?彼らはこの誘導以前に、Ⅱでガンダム工場の爆弾を全部外したり、アムロに爆発のタイミングを叫んだり、脱走するコズン少尉を先回りしてトラップ仕掛けたり、そもそもⅠのサイド7で一緒に行動していた親が死んだのに、この歳の子どもがピンピン生きていたことも、彼らこそが本当の意味(殺し合いの道具じゃない)での生まれながらのニュータイプだったからだと思う。ジオン・ダイクンが提唱し、両軍が研究している謎の新人類ニュータイプ。アムロら少年少女が、悩み苦しみながら覚醒する能力。でも次世代の幼い子どもたちは、当たり前に、生まれながらのニュータイプ(しかも無自覚)だった。というのがこの作品最大のオチだと思う。  『宇宙世紀0080、この戦いの後 地球連邦政府とジオン共和国との間に終戦協定が結ばれた』 TVと共通のナレーションが、戦争の終わりをアッサリと伝える。これでガンダムの物語は終わった。その後は戦争(グリプス戦争とかネオ・ジオン紛争とか)の無い、ニュータイプの作る平和な世界が生まれた。 …だけど再放送から爆発的な人気になり、アニメを見ない大人までも巻き込んで社会現象になる。ガンプラ、グッズ、SF考察、コスプレ集会。そんな中で作られたこの三部作映画の最後、富野監督から英語のメッセージが入る。 ~そして、今は皆様ひとりひとりの未来の洞察力に期待します~ という意味だそうだ。大人にまで広がったこのブームは、監督には予想外だったんじゃないだろうか?少年少女の成長のために作ったものを、大人の事情でほじくり返して、また作らされる。自分の意図しない売れ方は面白くなかったに違いない。 だとしたらあの英文は「みんな誰でもアムロみたいなニュータイプになれるんだよ」と言う優しい言葉というより、「さぁガンダムブームは終わったよ。アニメに夢中になるのはやめて、学校や会社で頑張るんだよ」という、歪んだ社会現象に対する監督からのメッセージに思える。 当時は今以上に英語が生活に浸透してない時代。辞書片手に英語が読める歳になったら、俺の言いたいこと解るだろう。というメッセージ。 だから、富野喜幸(本名)が作りたかったガンダムは、ここで終わり。 以降作られる富野由悠季(ペンネーム)のガンダムとは、切り離して観てください。
[映画館(邦画)] 9点(2021-01-09 20:03:54)
84.  機動戦士ガンダム 《ネタバレ》 
テレビアニメに少し新規作画を加えて編集した劇場版だから、映画としての評価が難しい。けど、ガンダム三部作以外に、こんな特殊な制作過程を経た映画を評価する機会は少ないと思うのと、私自身、重度のガンダム好きなので、シリーズの広がりや、映画では描かれていない設定にはなるべく触れないで、この映画版のみを評価してみたい。  初見は小学一年の頃で、映画館で一人で見た初めての映画だった。オープニング、大画面一杯に迫るザクの顔に、かなりビビったっけ。 アムロの戦争体験は強烈で、敵による無差別攻撃と連邦軍の誤射で、ガールフレンドの母や祖父が死ぬのを目の当たりにしている。敵と戦わなければ死ぬ。自分が船を守らなければ全てを失う。15歳の少年には過酷すぎるアムロの戦争体験。 いつのまにか軍属にさせられたアムロは地球の故郷で母に会う。ホワイトベースが隠れてるポイントから約30kmの街。連邦軍の支配下で、街中には規律の乱れた連邦兵が昼間から酒を飲む。その近所の教会ではボランティアがキャンプを張っているが、そこには毎日敵のパトロール隊が見回りに来る…未来の世界なのに、戦線の距離感は戦国時代並みだ。戦争のこう着状態がずっと続いているから、こんな辺境ではたぶん両軍とも、適当に戦わずにやり過ごしていたと思う。 そんな街で敵兵を撃つアムロ。逃げる敵兵も撃つ。生き残る為に、敵を見たら殺すのがアムロの体験してきた戦争。なのに何で母は分かってくれないのか?母親にしてみたら、久しぶりに会った息子が積極的に人を殺そうとしたら、それはショックだろう。アムロは母と分かり合えない怒りを、敵の小さな前線基地にぶつける。戦争で自分が生き残る為には、敵は殺すものだから。 最後は敵軍の総帥の演説。打倒独裁が連邦軍の正義だが、アムロは何のために敵と戦うのか?  三部作で一番地味だけど、ベースとした第二次世界大戦の色が濃いのと、アムロ自身が普通の生活から戦争に巻き込まれて、自ら戦う過程、民間人から軍人(又は少年から社会人)になっていく過程が共感出来て、大人になってからは一番好きな作品。これを子供向けのロボットアニメでやってしまったのが凄いな。 作画は確かに残念。当時、今のようなDVDやBDがあれば、完全新規作画で作り直せたかもしれないけど、だけど丸っこいザクや作画の勢いとかが感じられて、これも悪くないと思える。あと『特別編』という音声取り直しのDVDが出ているけど、オリジナル版の鑑賞がおすすめ。
[映画館(邦画)] 9点(2020-12-27 21:29:17)
85.  アパートの鍵貸します 《ネタバレ》 
~The Apartment~そのまんま『アパート』。貸室という表現もあるようだ。 バクスターが部屋を貸すのは出世のためだから、金銭は求めない。だから部屋を貸すのは上司だけだし、むしろアルコールやクラッカーを用意するなど抜け目ない。出世するにはこういうゴマの擦り方もあるのか。 バクスターの部屋を4人も利用しているのが驚きだが、この映画の保険会社の名のある登場人物はみんな浮気してる。まったく、どいつもこいつも…会社のクリスマスパーティが描かれるが、あっちこっちでチュッチュチュッチュと…なんて会社だ。 シェルドレイク部長が家を追い出されたように、この当時でもやはり浮気の代償は大きい。それでも、してしまうんだな人間だから。 みんなが一目置く高嶺の花のキューベリック。笑顔も素敵だが、あのエレベーターのボタンの押し方がまた可愛い。そんな彼女も見た目とは裏腹に、結構ドロドロした人生を送っている。彼女には、自分の足を撃ち抜いた話を笑い話に出来るバクスターがどう映っただろうか。 睡眠薬を飲んだフランを助けるドレイファス先生。一番まともで一番真面目な人。こんな人がなぜ、若手社員のバクスターと同じアパートに住んでいるのか?最後バクスターから治療費を受け取らないし、お金目的じゃない本当に良いお医者さんなんだろう。 一方で手近な女性と社内不倫を繰り返し、決まったレストランの決まった席で密会するシェルドレイク。クリスマスに睡眠薬事件があったにも関わらず、大晦日にはまた部屋を貸してくれと頼む。せめて別の機会にするべきだし、少なくともほかのホテルかモーテルとかにするべきじゃないか? バクスターが重役トイレの鍵を渡すシーン。良い人バクスターが初めて見せる静かな怒り。そしてフランとの乾杯とトランプ。 テンポの良さと時代が変わっても不変のテーマ。クリスマスシーズンに見たくなる映画だ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2020-12-21 01:29:05)
86.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 
ゾンビ映画なのに監督のゾンビ愛が全然感じられない。こういう自主制作っぽいので言えば『桐島…』の方がゾンビ愛あるかも。それらしい設定を適当にくっつけた、悪く言えばオイシイとこだけパクった、駄目シナリオじゃないでしょうか? 日本軍の実験って話はアリだけど、どうして西洋のオカルトに結びつけてしまったのかなぁ…ゾンビ発生の原因といえば、宇宙からの怪光線、科学薬品、生物兵器。このあたりがお約束です。 ゾンビ映画の起源はロメロ・ゾンビ。バタリアンやバイオハザードなんかもそうだけど、死人が蘇るファンタジーに、リアリティを持たせたから、今のゾンビ映画史があるのに、血で書いた五芒星じゃオカルトだよ。とてもじゃないけど映画好きの作ったゾンビ作品とは思えませんでした。    『ONE CUT OF THE DEAD』という番組の裏側から、日暮監督が、映画好きの延長ではなく職業監督になってしまった理由が観えてくる。元女優の奥さんは役に入りすぎるため引退を余儀なくされ、映画好きな娘はこだわりが強すぎて撮影現場をクビになる。妥協に妥協を重ねて続けてきたであろう、今の監督の仕事。職業監督は自分の“好き”を入れちゃ駄目なんですね。 イケメン俳優に自分で「作品の前に番組なんです」って言っていたのに、カメラが回ると「これは俺の作品だ!」ってアドリブ。最初の鑑賞では笑えて、複数回鑑賞後はアツいものを感じました。 このシーンをカメラ(モニター)越しに観ていた真央は、きっと神谷くんだけを観ていたんでしょう。あんな熱演を終えて戻ってきた父にも素っ気ない。  こんなどうしようもない作品の中で、監督は何故か五芒星にこだわりました。思えば本当のゾンビの起源はブードゥー教=オカルトなんですよね。日暮監督はゾンビ映画好きのお約束を敢えて入れず、コッソリとオリジナリティを入れようとしたのかもしれません。 「日暮さ~ん。作品の前に、番組なんです」機材の故障で、オチをアッサリ捨てるプロデューサーに、食って掛かる日暮監督。普段の父を知っているだけに、驚いてる真央の表情がイイんだこれが。父の番組なんてチャンネル変えてしまうくらい、どうとも思っていないのに、カメラには映らないところで繰り広げられる作品への情熱。真央が考える“戦場”で戦っている父の姿。  愛を感じないゾンビ映画の裏側に、息を殺して潜ませた監督の作品愛。トラブル続きの中、どうにか完成させるために奔走するスタッフ。そして最後に父を支えた家族愛。事前にオチを知る事もなく、また期待が高まり過ぎることもなく、無事、上田監督が観せたいものを観ることが出来ました。心から笑えて、ほっこり出来ました。そして『私は映画が大好きだわ』って、再認識出来ました。
[映画館(邦画)] 8点(2024-04-10 23:58:47)(良:1票)
87.  ゴジラ(1954) 《ネタバレ》 
日本ほど特撮怪獣が沢山創られた国はないでしょう。主にウルトラ怪獣ですが、ゴモラ、ゼットン、バルタン星人と、きっとどの世代でも名前くらいは知っているんじゃないでしょうか?そんな中で、元祖であり王者と言える怪獣がゴジラです。 私はちょうどゴジラ空白の世代でした。小さい頃、ウルトラシリーズは沢山再放送されていましたが、ゴジラ映画は観たことなくて。子供向けの雑誌などから『人類の味方として、悪い怪獣と戦う正義のゴジラ』なんてイメージがあった程度でした。そんな中“まだ白黒映画の時代、最初のゴジラは人類の敵だったんだよ。そして今度公開されるゴジラ('84)も、悪者なんだよ。”なんて聞いて、何かとても不思議な感じでした。  本作を最初に観たのは20歳くらいの頃です。街の焼ける様子、逃げ惑う人々から、まだ戦後間もない印象をとても強く感じました。公開年は、戦争が終わって僅か9年。でも僅か9年でここまで復興している日本の逞しさと、ゴジラという巨大なモンスターを創り上げた日本の受けた傷の深さが感じられました。 アメリカの水爆実験が生んだ怪獣ゴジラが、本土に上陸して無目的に都市を破壊する。令和に入った現在に至るも、唯一無二の被爆国として、当事者のアメリカ人を主要人物に出すことなく、原水爆を表現した作品と言えるでしょう。  どうしても後年のシリーズ化したゴジラのイメージに引っ張られていたため、今回始めてゴジラのデザインが理解できた気がしました。モノクロ映像のゴジラの、黒くゴツゴツしたあの皮膚は、水爆の高熱で表皮が焼け焦げてたんですね。 背中のヒレは皮膚に刺さったガラス片でしょうか。そしてゴジラは苦しみの叫び声を上げながら、自ら焼け野原にした東京の街を彷徨います。 本作公開の僅か9年前に、他国により自分の国が焼かれる地獄を観た人々が作った地獄絵図。この映画からは、他国に国を焼かれた恨み節より、日本をここまでしてしまった、原爆が落ちるまで戦争を続けてしまった、自ら国を焼け野原にしてしまった、そんな自責の念が感じられます。  山根教授のゴジラを保護し、生命力の研究をするべきだという主張は、今なお放射能被害に苦しむ被爆者たちを救うことが出来たらという気持ちからでしょう。そう考えるとオキシジェン・デストロイヤーは、例えるなら苦しみから逃れるための安楽死に思えます。 芹沢教授がオキシジェン~の研究成果ごと死を選んだ結末は、どんなに苦しくても前だけを見て生きていく。そんな日本の決意にも思えます。 本作を観てどう思うかは人それぞれですが、戦争で受けた傷を娯楽映画にしてしまう日本人のパワー。創意工夫。結果本作は、世界でいちばん有名な日本映画の一つになりました。
[ビデオ(邦画)] 8点(2024-04-03 23:51:41)(良:3票)
88.  クラッシュ(2004) 《ネタバレ》 
“Crash”『衝突』。多数の登場人物が、さっきまで自分とは無関係だった人と衝突することで、様々な影響を受ける群像劇。 こういう、誰かの行いが、他の誰かに影響を与え、連鎖していく映画ってとても好きです。点と点がどんどん結びついていく快楽とでも言うんでしょうか?そして人間は誰しも多面性を持っていて、善と悪だけでは別け切らない部分も、うまく表現できていたと思います。 この一本の映画で、登場人物の連鎖が綺麗にまとまることはなく、劇中で全てが完結していないのも、たくさんの人物の中から一部を抜粋しただけな感じがよく出ていました。  この映画を観て思ったのは、アメリカでは他人を人種で区別することでしょうか。黒人、アラブ系、メキシコ人、アジア人。怒りをぶつける時は、本人には変えようのない人種の部分を攻撃する。まぁ、日本でも職業とか学歴とかでマウント取るような人、居ますものね。公開された時代の関係もあるけど、銃砲店でのファハドへの暴言は酷い。ダニエルの入れ墨を見たジーンの反応は、過剰ではあるけど気持ちはわかるかな。  魔法のマントは2回観て2回とも泣けました。ファハドには奇跡。奇跡には理由があるけど、それを言わないドリ。ドリが銃砲店のあの短い時間で、数ある弾丸の中から“あの”赤い箱を選んだのは、彼女の職業が深く関係していたことに、2回目で気が付きました。 トムがピーターを撃つ。普段善人なトムの裏の顔とも言えるけど、善人だからこそ、ああするしか無かったとも言えるなぁって。誰も見てないんだから正当防衛になるよう、ピーターを路上強盗に仕立てる小細工とかも出来たろうに。 次もう一度観たら、また新たな気付きがあるかもしれません。
[DVD(字幕)] 8点(2024-03-11 20:31:42)
89.  エレファント・マン 《ネタバレ》 
“The Elephant Man”『象男』。本作が日本でヒットした要因の一つとして、今と比べて、人権意識がまだまだ未熟だった当時の時代背景があると思います。 私が子供の頃、夏祭りのお化け屋敷の隣に見世物小屋がありました。小屋の入口の隣に、上半身裸のお姉さんが背中を向けて座っていて、マイクを持った興行主が、彼女が生きたニワトリを食べるとか何とかって、啖呵を流してました。小屋の中には牛と人のアイノコ『牛女』や、蛇を食べる『蛇女』なんかもいるそうです。興味はあったけど、正直怖いのと親と一緒なのとで、見せてはもらえませんでしたが… まだそんな時代に公開された本作。当時はホラー(恐怖)映画にジャンル分けされていたと思います。珍しいモノクロ映画。ポスターの不気味な布を被った人物。テレビでは倒されて悲鳴を上げる少女と迫りくるエレファントマンの映像(CM?)が流れ、頭巾の下にはどんな恐ろしい素顔が隠れているのか?って方向で宣伝されていたと思います。 また後年『マイケル・ジャクソンがエレファント・マンの骨を買おうとして断られた』なんてゴシップも独り歩きして、子供にも関心の高い映画でした。  初見はテレビのロードショー。思っていたのと違う内容に、下衆な好奇心は消え去り、彼の容姿の不気味さより、今まで置かれていた環境の悲惨さ、彼の豊かな感性と世間の残酷さから、「ジョン・メリック可哀そう」に変わっていきます。 彼の心の美しさと、トリーヴス先生や婦長さん、ケンドールさんの献身的な行いに暖かさを感じ、バイツや夜警の男に怒りを感じました。 当時、本作をホラーに分類するのは、メディアの悪ノリにも思えますが、ホラーだと思って観たからこそ、内容から受けるショックと感動が大きかったように思います。それは見世物小屋でトリーヴス先生が初めて彼を見て、一筋の涙を流すのに似た感覚を、私も味わえたのです。今振り返るとメディアのファインプレーじゃないでしょうか?  彼を取り返そうとするバイツにトリーヴスが言う「他の人間の不幸を利用して儲けてくれ」という台詞に、見世物小屋の小人が言う「俺たちみたいな人間には運も必要だ」という台詞が答えになっていて、とても現実的に感じました。 トリーヴスたちの行いは偽善なのか?見世物小屋に来る大衆と、病院に彼に面会に来る著名人、夜警に金を払って見に来る連中、劇場で彼に拍手を送る観客は同類なのか?世間という見えない存在が、彼をどう思うかでなく、彼自身がどう思うかが大事かも。 同じ見られる存在にしても、見世物小屋と舞台女優は違います。ジョン本人が会うこと・見られることを望むか望まないかが大きな違いです。  難しいテーマですが、彼はトリーヴスに助けられ、人間らしく生きる権利、自分で選ぶ権利を得たことが重要に思います。 でも彼は、夜警が自分を見世物にしても助けを求めない。彼が選ぶのは自分をどうするか?だけで、他人にどうしてほしいなどは望みませんでした。 そんな謙虚な彼が唯一他の人に望んだこと、駅で追い詰められた時「僕は人間だ」と叫ぶ姿が心に突き刺さります。 彼が最後に選んだのが横になって寝ることでした。聖書を愛読した彼が自死を選んだとは考えにくいですが、もし目を覚ますことがなくても後悔はない、そんな決意での就寝は、悲しくも幸せな結末でした。
[地上波(吹替)] 8点(2024-02-26 12:05:56)(良:1票)
90.  グラディエーター 《ネタバレ》 
“Gladiator”『剣闘士』。ですね。 巨大な闘技場で剣闘士が殺し合う。これもう、少年ジャンプの格闘漫画ですよね。私の世代はみんな大好きだと思います。主人公が普通の奴隷でなく立派な過去があり、暴君に家族を殺された復讐劇という勧善懲悪もの。戦いの舞台も、地方の小闘技場から中央の巨大コロッセオへ。自分や仲間もどんどんキラキラ装飾が増えていく。敵の甲冑も不気味なのから強そうなのまで。そんで戦車だ、寅だ、伝説の剣闘士だとグレードアップしていくのも、まさにジャンプの王道展開。優れた娯楽性です。  CGで表現の自由度が大幅に上がった、今からおよそ四半世紀前。本作以降、古代ローマ時代(とその近辺)を舞台とした映画が幾つか制作されていますが、この映画こそが知名度・完成度共にいちばん優れていると思います。 この年代辺りを頂点に、以降、猫も杓子もCGで創られるようになっていきます。それはそれでお金が掛かるんだろうけど、どんなに凄い映像でも『あ、これCG表現だな』って解ると、途端に安っぽく感じてしまいます。 本作ではコロッセオやローマ都市の俯瞰図といった、実物で再現できないものをCGで補っているのが解ります。そして昔ながらの実際に作られたセットに、豪華な衣装。本物の馬車に戦車に装飾品やら小物やら。つまり、メチャクチャお金が掛かってるのが感じ取れます。映画観るのにどうせお金を払うなら、CGのアニメじゃなく、ゴージャスな本物を観たいもの。本作はそんな欲求を満たしてくれます。  マキシマス将軍が家族の復讐を果たし、悪のコモドゥスを倒して、ローマに一筋の平和が訪れ、仲間の奴隷は故郷へと帰っていく。シンプルで良いですねぇ。ストーリーは創作部分がたっぷりで、本作を史実と比べるのは無意味だと感じます。本作をキッカケにイメージを膨らませて、史実に興味を持つのが正しい見方でしょうね。でもこの時代の人の名前って、長くてみんな似てて、難しいなぁ。
[DVD(字幕)] 8点(2024-02-18 16:19:37)
91.  ガープの世界 《ネタバレ》 
“The World According to Garp”『ガープの目から見た世界』。ストーリーを文字で起こしてみると、かなり悲壮感漂う内容。にも関わらず、明るくて可笑しくて、不思議な映画です。 観せかたも斬新で、OPののんびりとした『ホエン・アイム・シックスティ・フォー』にのって、ゆっくり空を舞う赤ちゃん。のどかですね。幼いガープの空想で、父親がアニメーションで出てくるのもほのぼのしてます。交通事故のシーンは衝突音とと静止画。ウオルトにゆっくりズームするカメラで、何が起きたかを連想させるのも上手い手法です。  ガープの出生はかなり衝撃的で、ジェニーの話に驚くとともに、校長先生の「君は死にかけている男をレイプしたのか!?」にとても共感してしまう。こんな人がベストセラー作家になって女性解放運動の中心人物になるのは、世の中は物事の一面だけを見ているんだなって思えました。 エレン・ジェームズ運動。エレン本人が望まないのに運動を続け、自分の舌を自ら切り落とす抗議運動は、本人たちの自己満足でしか無い。女性の自立は望ましいことでも、その方法は間違ってるんじゃないの?って、そんなメッセージにも思えました。  ガープも自己中な男で、クッシーとの関係を続けながらヘレンを口説こうとします。結婚後も最初に浮気したのはガープなのに、疑われると逆ギレ。子供の寝顔を見て「最高に幸せだ」なんて、どの口が言うのか。一時停止を無視する乱暴運転の男にキレるくせに、自分は無灯火運転で事故を起こす。ベビーシッターとの一件がバレてないからって、いつまでもヘレンを許さないガープの人間性は褒められたものじゃありません。 クッシーとプーの姉妹。Poohはうんこで、Cushyは快適=快楽。音がPussyに似てるってのもある?一人はガープに快楽を与え、もう一人は死を与えた。 この映画の中では一番異彩を放つロバータが、一番マトモです。  …なんか全然まとまりが悪いですね。まとめられない所がこの映画のレビューっぽいかな?空を飛びたい少年が、人生の最後にヘリで運ばれて、何か上手くまとまった感じに思える。そういう、捉えどころのなさもこの映画の魅力かと…
[地上波(吹替)] 8点(2024-02-12 18:21:18)
92.  桐島、部活やめるってよ 《ネタバレ》 
タイトルがもう、気になって気になって。『桐島くんが出てこない映画』って情報は入ってたけど、他は何も知らない状態。やっぱ永年指名手配の桐島聡から名前持ってきたのかなぁ?なんて思っていたところ、先日聡の方が出てきたので鑑賞。 同じ時間を、違う人物の目線で、何度も何度も繰り返す。なんか面白い。さっき声掛けたのはこの子達だったのか。みたいな多面的な捉え方だけでなく、あの場面をどんな気持ちで観ていたのか?とか。他人の目線では分からなかった本人の気持ちがよく分かる。上手い。  スクール・カースト上位・下位という大きなククリだけでなく、グループ内にも上位・下位があり、その表現がまた妙に生々しくて。私とは世代は違うんだけど『当時そういう気持ちになったわぁ~』と学生時代が懐かしく思い出される。 カースト下位の者が、上位の者の気持ちを汲み取り、機嫌を損ねないように気を使うところ。実果が表向き沙奈に気を使い、かすみには本音を話す。沙奈はトップの梨紗の親友ポジションを自負してるから、それを維持するための下位への行動が、まるで中間管理職。 カースト最底辺の映画部部長が、吹奏楽部部長と戦うところ。カーストの上下が曖昧どうしの戦いは、ある意味異種格闘戦のよう。その場所じゃなきゃダメな亜矢の言い分は、まるでCGアニメのピーピング・ライフのような可笑しさを感じた。 ちょっと顔が怖いのに優しい野球部キャプテン。カーストの上下がひっくり返ってる宏樹との関係も、どこか可笑しい。 桐島がキャプテンだったバレー部。戦力ダウンの責任を同じリベロの風助に擦り付け、練習名目で鬱憤をぶつける。  桐島がもたらせた衝撃。彼が並ぶ者の居ないカーストの絶対的トップなのが伝わる。自分の彼女にも親友にも事情を伝えず、突然全てを決めた桐島。本人不在のカースト下位たちが、勝手に右往左往しだす。 そして、思っていたのと全然違うスケールの結末に、この映画が大好きになった。あ、この映画の主人公は宏樹でなく前田だったんだ。 野球部キャプテンが宏樹に掛けた最後の言葉。一番に屋上を後にする風助の言葉。映画を撮り続ける前田の言葉。出来るのにやってこなかった宏樹のこれからが始まる。主題歌もまた良いんだわこれが。
[DVD(邦画)] 8点(2024-02-03 19:00:11)
93.  キャリー(1976) 《ネタバレ》 
“Carrie”邦題まま。人名。'70年代はキリスト教に絡んだオカルト・ホラーの名作が多いですね。 高校生の時、私の家でホラー映画を観ることがあって、映画に詳しくない友人がレンタルビデオ屋さんに行き、店員さんにシチュエーションを伝えて、オススメされたのがコレ。夏の暑い夜、私の家(もちろん実家)のエアコンもない6畳間で、男女6人でキャリーを観る…レンタル屋の店員さんが、なぜコレを選んだのか、とても疑問。 いきなり金髪ギャルのハダカが惜しげもなくブリンブリン出てきます。当時はボカシが入ってたと思いました。そして初潮とイジメ…まだそんなに親しいというわけでもない私たちには、ちょっとハードル高かったです。ただ最後ビシッと決めてくれて、“怖い映画観たい欲”は一応満たされ、盛り上がれましたよ。 当時は血まみれで生徒を殺すキャリー(シシー・スペイセク)のビジュアル面が怖かったと思ってました。でもこの歳になって観ると、キャリー可哀想ですね。母親が熱狂的な信者なため、普通の暮らしが出来ず、虐められてしまう。変な“チカラ”も発動してしまう。それでも普通の女の子に憧れるキャリーが、いじらしいです。反省部屋のキリスト像が怖い。どういう仕組みで目が光ってるんだろう?自分の娘をぶって閉じ込める母親。どう見たって虐待だけど、街の人もあの母親と関わりたくなかったんだろうな。  さて普通の女の子になりたいキャリー。図書室で鉛筆咥えて本を探してて、急にトミーに話しかけられてふじこふじこしてるキャリーが可愛い。ちゃんと受け答えも出来るし、返事しないで走って逃げるなんて、少女漫画のヒロインの王道だよね。 ドレスアップして綺麗になって、トニーの車でプロムにいって、自分で車のドアを開けようとして『あっ』って思って、トミーに開けてもらうのを待つ時の表情がまた最高に可愛いんだ。 この映画で救いなのは、スーもトミーも本当にいい子たちで、その友人たちもキャリーを受け入れてるところ。彼女はこれから、普通の“綺麗な”女の子として、まともな暮らしをしていける。何度も観た映画だけど、あの大惨事が起きるのは知ってるけど、キャリーの幸せを願わずにはいられなくなってしまう。  全てをぶち壊した大惨事。成功して喜ぶ赤帽女と、たまたま隣りにいたトミーの友達とその彼女の表情の違いが秀逸。 パニックになったキャリーの目には、味方と思った同級生や、コリンズ先生までも自分を笑ってる幻覚を見てしまう。…でも無関係な生徒たちは、ドッキリ企画か何かだと思って笑ってる。 自分を笑った連中に復讐するキャリーがただただ可哀想。最後に母親に抱きつくしか出来ないキャリーが可哀想。そして…可哀想。  原作はS・キングの長編デビュー作です。うろ覚えですが、キャリーの起こした事件を、新聞記事や生存者のインタビュー記事で振り返る、ちょっと変わった構成になってたと記憶してます。映画も素晴らしいけど原作も素晴らしかったですよ。
[ビデオ(字幕)] 8点(2024-01-30 21:33:40)
94.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 
“Gran Torino”『フォード・トリノの一部車種の愛称』。日本だとスカイラインの、GT-Rじゃなくジャパンとか鉄仮面だと思う。 ウォルトはアメリカの輝かしい時代を生きた世代だ。'50年代に青春を過ごし、朝鮮戦争で戦ったのちフォードの工場で働き、愛する奥さんと二人の息子。郊外のニュータウンに一戸建てを持った男の余生、成れの果て。 2000年代、アメリカは様変わりしていた。ニュータウンは寂れて老朽化し、残っているのは老人とヨーロッパの移民系。金のある白人はもっと利便性の良い地域に移り住み、代わりに入ってくるのはアジア人。若者は移民や黒人のギャング。奥さんに先立たれ、息子はトヨタに勤めていて、孫はみんな馬鹿。  当時イーストウッドは78歳。いつ死んでもおかしくない年齢の男から観たアメリカの小さな街。あの街はアメリカの縮図。ウォルトは決して裕福ではない。広いとは言えない建売りの家をピカピカにして、小さな庭の芝を刈り、欠かさず国旗を掲揚している。グラン・トリノも当時大人気のマッスルカーってほどではなく、燃費の悪い中型のアメ車。ウォルトはアメリカの中流家庭の、プライドの塊のような男。  また'50年代の白人文化を過ごしてきた世代からの警告のカタチも取っている。白人中心のアメリカ社会も、アメリカ中心の世界も、今後更に変わっていく。 奇しくも公開年に起きたのが、サブプライム・ローン問題を起点としたリーマン・ショック。今の時代のウォルトのような中流以下の住宅ローン債務が焼き付いて、大手銀行が破綻するまでのダメージに発展し、アメリカ経済がどん底に落ちていった最中の公開。  この街の若い白人は、スーの友達のようなナヨナヨした白人しかいない。移民たちを受け入れて行くしかない現実がある以上、どんな人達と共に生きていくかを考えなくてはいけない。世界の警察だったアメリカは、他民族に銃を向けるのではなく、他の方法で解決をしなければいけない。 ギャングと戦う決意をしたウォルトは、白人の誇り高いスピリットは神父に残し、アメリカの輝かしいプライド(グラン・トリノ)はタオに残した。 最後ウォルトの手に残ったのはジッポーライター。これもまた、アメリカが世界に誇った古き良きアメリカ製品の象徴であり、消えゆくタバコ文化の象徴。
[DVD(字幕)] 8点(2023-12-23 11:24:57)
95.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 
ゴジラは“日本を襲う破壊の象徴”です。初代ゴジラは原爆。シン・ゴジラは東日本大震災。そして本作のゴジラは太平洋戦争(※書き方として東京大空襲と迷いましたが)でしょうか。 圧倒的な物量を誇るアメリカ軍を相手にした戦争は、まさにゴジラを相手に戦うようなものだったことでしょう。 最初のゴジラは軍人だけの基地に出てきました。そしてより巨大になって本土に上陸し、街を壊して人を踏み潰します。 戦争は軍人同士が海の向こうで戦うものだと思っていたのに、空襲で自分の家が焼かれ、家族が殺される。アメリカ軍の無差別爆撃とゴジラの破壊行為。両者にどんな違いがあるだろうか。  三丁目の夕日の、少し前の日本が舞台。帝国海軍も警察予備隊も無い、自衛能力のない時代の日本とゴジラの戦い。役目を終えた軍艦が呼び起こされ、日の目を見ることのなかった戦闘機が空を舞う映像は、過去のゴジラ作品のどんな秘密兵器よりもアツい展開でした。 焼け野原から徐々に復興していく東京の町並みと、少しずつ生活も安定してきて、家族になっていく敷島と典子。ようやく前を向いて生きていこうとした矢先…自分が死ぬのが怖くて特攻出来なかった敷島。彼が特攻しなかったから家族が死んだわけではないけど、戦うべきときに戦わなかった報いが、後々重くのしかかる。因果応報。終わらない戦争。 人間ドラマに重点を置いた本作、後半涙腺緩みっぱなしでした。説明が丁寧だから、展開は読めるんです。それでも涙が出てきます。ありえない最後も全然受け入れられました。エンドロールが始まっても、ほっぺが涙でベチャベチャです。想像以上に良いものを観せてもらいました。    さて。彼女に何があったのか。彼を突き飛ばした後、あの勢いで吹っ飛んだんだから、五体満足なハズはない。 街に飛び散ったゴジラの肉片には、強い放射能だけでなく、強い再生能力も有している。首筋のアレは、飛び散ったコレなんだろう。 何か不吉な未来を暗示しているようにも思えるけど、私は“マイナスを乗り越えてきた日本人”を表しているんだと思った。 どんなに傷つき、どんなに破壊されても立ち直ってきた日本。過去の被害を隠すこと無く、むしろ吸収して乗り越えてきた日本人。戦争、原爆、大地震も乗り越えた日本人は、ゴジラによる未曾有の破壊を受けても、それさえも吸収して乗り越える力があるんだ。という意味だと解釈しました。 …ただもし今後『ゴジラ・ゼロ』とか続編があるなら、解釈変わるだろうけど。
[映画館(邦画)] 8点(2023-11-21 00:00:20)
96.  風と共に去りぬ 《ネタバレ》 
“Gone with the Wind”『行ってしまう』を『去りぬ』とするところに、当時の人のセンスを感じます。 タイトルの『風』って何でしょうね?自然に発生するもの。人に変化をもたらすもの。恋愛。家族。結婚。離婚。死別。戦争。発展。時代…どの時代でも変わらないもの。あぁ『川の流れのように』の『川』と同じような使われ方かな?日本人にも根付いた考え方で、とても共感しやすい発想ですよね。  2:30もの序曲から始まる、雄大、壮大なタイトルと激動の時代。時代の流れに翻弄される登場人物たち。雑草のようにたくましく生き抜く主人公。世界大戦が始まる年に創られ、日本では戦後復興後に公開された本作は、戦中戦後を生き抜いた人たちに多くの共感を持って受け入れられたことでしょう。 そして美しく奥行きのあるカラー映像。今観ても美しさを損なわない完璧な構図。テレビCMなんて無い時代、ポスターと広告の数点の写真、せいぜい観た人の感想しか情報が無い中、まるで“動く絵画”のような映像を劇場の大画面で観せられるんだから、観るものの度肝を抜いたことは容易に想像出来ます。 激動の時代と一人の女性の半生。まるでNHKの大河ドラマと連続テレビ小説をミックスさせたような物語。大河も朝ドラも共に'60年代から始まっているけど、この映画の影響ってかなり大きかったんじゃないかな?  映像の美しさは文句なし。キング・オブ・カラー映画とも言える本作。私は公開から60年近く経って観た訳だけど、まず想像と全然違ったスカーレットの人物像に驚いた。何とまぁワガママで自分本意な女だろう?これじゃ朝ドラの主人公としては大不評だろう。 そして南北戦争を題材にしているのに、戦闘シーンはほぼ皆無。せっかくのスケールの大きさも、後方の負傷兵と焼けた街ばかりが目に入る。これじゃ大河としてパッとしない。今なら映像美だけの映画扱いされそうだけど、それでも、ウケた。 スカーレットの生き様に共感した、当時の女性の支持が大きかったんだと思われます。  ウーマン・リブが叫ばれるちょっと前の時代。映画の中ではもっとずっと昔の時代。誰と結婚しても好きな男のことだけを考え、子供が生まれても“オンナ”を捨てなかった女。このオンナ像は当時の女性たちに、センセーショナルに受け入れられたことでしょう。 天使のようなメラニーを男社会の世の理想とするなら、自由奔放なスカーレットは当時の声なきオンナたちの理想。 有名なポスター観てください。レットがスカーレットを抱いた構図。『美しい女を捻じ伏せるハンサムな男のラブロマンス』に見える。たくましいレットと、か細いスカーレットの肩幅の違いを強調しつつ、最後の最後まで振り回されるのはレットの方。 男社会の中『主人公には共感できないけど、映像は凄い大作映画』を隠れ蓑に、世の女性たちは、声を出さず、したたかにこの映画を支持し、自分の中のスカーレット(=オンナ)を育んでいったに違いない。
[DVD(字幕)] 8点(2023-11-03 11:46:02)
97.  イン・ハー・シューズ 《ネタバレ》 
“In Her Shoes”『彼女の立場』。劇中のヒールの印象的な使い方とタイトルがマッチしてます。 余談だけど、PCでみんシネの◆検索ウィンドウ◆の検索欄を見ると、何故か『イン・ハー・シューズ』がデフォで入ってます。なんでだろ?私だけ? 『メリーに首ったけ』みたいなコメディだと思って観たから、案外真面目な内容に結構衝撃を受けました。  ふらふらとその日暮らしの遊び人マギーと、生活の安定と引き換えに弾けた生き方ができない堅ぶつローズの姉妹。 一見マギーのほうが楽しくて幸せそうに思えたけど、たった1日飼っただけの犬“ハニーバン”の思い出が忘れられないところから、空っぽのまま成長したんだろう。テレビの2次審査でセリフが読めなくて追い込まれるときの辛そうな表情が妙にリアル。 ローズのような安定生活“だけ”の人。上司ジムの気まぐれに利用される“だけ”の人生。シカゴにサイモンと行かせる時点で脈ナシなんだけど、そんな薄い縁にすがるほど追い込まれてるローズ。  二人がケンカ別れして、離れ離れになる。意気投合して2人の心が繋がっている時は1つのカメラにツーショットで収まり、言い争いをする時はそれぞれワンショットでギスギスした空気を演出するなど、結構計算された映画です。 姉妹の関係から今後の生き方まで、自分の力で人生を変えていく物語ですよね。お互いに新しい生き方を始めると、今まで意識していなかった“彼女の立場”が徐々に入り込んでくる。弁護士事務所を辞めて活き活きとその日暮らしを始めるローズに、“元気なシニアの施設”で得意分野をビジネスに変えていくマギー。何かどっちも『今までより良い』生き方に思えます。 アノ階段を犬と一緒に駆け上がるローズ。教授との読書で、詩の意味を理解したときのマギー。人生が変わる爽快感が伝わってきます。  もう一人の重要人物、祖母のエラ。幼いときに母親を亡くしている二人にとって、本当の母親代わりとなる人物。そして娘にしてしまった仕打ちをずっと後悔して生きてきた過去。自分の娘がどんな最後を迎えたのか。孫の口から語られる真実。ここに来てようやく理解できた娘婿の感情。 年老いた老婆だって人生を再構築する事ができる。壊れたまま終わるはずだった、娘婿マイケルとの再会。地味だけど良い演出でした。
[DVD(字幕)] 8点(2023-10-02 22:07:01)
98.  イングリッシュ・ペイシェント 《ネタバレ》 
“The English Patient”『イギリス人の患者』。 上空から見た砂漠のうねりが何とも美しい。女性の体の曲線美にように艶めかしい凹凸。そして泳ぐ人の壁画の模写。単純な線なんだけど腿や腰の肉付きの表現は、原始的ながら女性独特の体型を想像させる。そしてキャサリンの体の線の細さ。抱きしめたら折れそうな細さ。  彼らの仕事である『砂漠の地図』も、彼らが洞窟で発見した『泳ぐ人の壁画』も、特定の誰かのためではなく、自分たちのことを後の誰かに伝え残したい気持ちが強かったんじゃないだろうか。 アルマシーが記憶を失った(事にした)のは、ドイツに協力したことを隠して図太く生き延びるためではなく、キャサリンとのことを残したかっただけなんだろうなぁ。カラヴァッジョに当時の自分の気持ちを伝え、ハナにキャサリンの最後の手紙を読んでもらい、自分がここにいる理由を再確認することで、思い残すこと無く死ぬことが出来たんだろう。  不倫に嫌悪感を抱くのも理解できるけど、心から1人の女性を愛したことのない不器用なアルマシーと、深く考えず幼馴染と結婚してしまっていたキャサリンの愛と考えると、それこそ人種に対する偏見や、国が違うことで起きる戦争と同じ悲劇とも思えた。国境があるために起こる悲劇が戦争なら、婚姻があるために起こる悲劇が遅すぎた愛なのかしら。  別れ際、当然というか大人らしい選択をしたキャサリン。まさかの無理心中の際に、ネックレスにした指ぬきを付けていたのが、それが鎖骨のくぼみに収まっていたのを観て涙が出てしまった。 愛より夫を選んだけど、ここ(天突って言うそうだけど、これ東洋のツボの名前だよなぁ…医学的には頚窩(ケイカ=jugular fossa)って言うそうだよ?)は、二度と会うことは無いあなたのもの。って、キャサリンのような大人の女性がこんな可愛らしいことしてたら、この世ではない場所までキャサリンに会いに行った、アルマシーの気持ちが解ったような気がしたわ。
[DVD(字幕)] 8点(2023-09-24 23:20:35)
99.  男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け 《ネタバレ》 
シリーズ17作目。はははっジョーズだ! 源ちゃんの千切れた腹わたにボカシ掛かってるわ(※BSテレ東)、そこまでリアルに再現したんだなぁ。さくらは狂った挙げ句サメに食い殺されるし、現実と夢の関係を考えたりもしたけど、こりゃ何も考えてないわ。単に息抜きとして楽しんで創ってるんだわ。  満男の入学祝いというのが劇中時間の経過を感じさせる。あとおばちゃんが寅のことを「寅さん」から「寅ちゃん」に呼び方を変えてる。何作前からかなぁ?ご祝儀袋にいくら包んだんだろ? シリーズ随一の名作と呼び声の高い本作。普段のように寅がバカをやるのでなく、お人好しな一面と、男気のある一面を見せる下町人情話。 この話が発祥かどうかは解らないけど、文無しジジイが実は金持ちで~ってのは割とよくある話。そして実は高名な画家で絵が高く売れて~ってのも黄金パターンかもしれない。古本屋店主が絵を見て青観作だと気づく展開は、解っちゃいるけど“おぉ~~!”ってなる。 青観と志乃のエピソードは、後からなるほど~と納得。当時の状況を知っていると、より意味深く感じられたことだろう。  前半と後半で別な話になるパターンかと思いきや、後半に大きな足跡を残す青観先生。借家のボロボロの床の間に似つかわしくない素晴らしい牡丹の絵は、芸者に身を落とし、貸した金は帰らなくても、明るく前向きに生きていくぼたんの生き様のよう。 「決まってるじゃないかよ、お前さんと所帯を持とうと思ってやって来たんだよ。」初めての決着が着かないパターン。この終わり方大好き。リリーの結婚話で、気まずい空気を作ってしまったから、ぼたんには自分から冗談としてジャブ打ちしといたんじゃないかなぁ?それだけぼたんとの気さくな関係を大事にしたかったんじゃないかな。 東京に向かって手を合わせる最後もすごく爽やか。一本完結の良い人情映画を観たなぁって気分にさせてくれました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-09-09 17:35:03)
100.  イヴの総て 《ネタバレ》 
“All About Eve”邦題まま『イヴについての全て』なんだけど『総て』って所が良いね。 華やかな授賞式。面白くない顔のゲスト。薄汚いコートと変な帽子の可愛い少女が女優として成功するまでの、朝ドラみたいなシンデレラ・サクセス・ストーリー…にしては、イヴの気持ち・内面が語られることは無く、マーゴやカレン側から観たイヴが語られていく。 やり過ぎ感のある誕生日の祝電や代役の一件で、マーゴとの気持にズレが生じたのでなく、出会った最初からイヴの策略だったのは、やっぱり恐ろしい。  「カズウェルの事など誰も覚えちゃいない」と言わせるほどの演技力と、「子供のやることにイチイチ目くじら立てるなんて」マーゴにはない若さという武器を駆使して、世話になった周りの人たちを踏み台にしてのし上がっていくイヴの内面の醜悪さをまざまざと観せてくれた。 徐々に剥がされる化けの皮。レストランでカレンに取り入り、いよいよ本性を曝け出す。最初の頃の純粋な少女の面影はなく野心に燃える女の顔だ。黒いドレスもイヴの裏の顔を表しているよう。  腹黒いイヴがドウィットを取り込もうとして、逆に身辺調査結果で追い詰められるのはスカッとする。でもドウィットももっと腹黒いな。裏側を知るだけに授賞式の感謝を述べるスピーチの白々しさがハンパない。白いドレスを着たドス黒い名女優。 ホテルの部屋に忍び込んでいたフィービー。合わせ鏡に映る無数のフィービー≒将来のイヴたちが、今後は様々な手を使ってトップの座を目指して挑戦してくる。手に入れた名声と孤独。心を許せる話し相手のいないイヴは、フィービーがどれだけ腹黒かろうと、魂胆が見えようと、近くに置くしかないんだろうな。 定価500円とかの安いDVDは字幕がダメだね。英語の教科書読んでるみたい。
[DVD(字幕)] 8点(2023-09-09 13:30:28)
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